2022年02月23日 公開
このころ、米国人俳優ヴィック・オリバーとの結婚が破綻していたチャーチルの娘サラはロンドンに戻っていた。52歳の大使と27歳のサラはたちまち不倫の関係に落ちた。公然の「秘密」だったが、誰も口にしなかった。米国の要人との「特別な」関係は愛国的行為と見なされた。
同じころ、英国への武器支援の打ち合わせにアヴェレル・ハリマンがロンドンにやって来た。のちに駐ソ大使となるFDRのお気に入りである。歓迎のパーティーがロンドンの高級ホテル「ザ・ドチェスター」で開かれた。
ハリマンの隣に座ったのはパメラ・チャーチルだった。長男ランドルフの妻である。彼女は、肩を大きく晒さらしたドレスに身を包んでいた。食事のあいだ、彼の腕にその指をしなやかに纏わり付かせ、彼のたわいのないジョークに破顔した。
2人はその夜を共にした。闇夜の中でドイツ空軍の爆撃が続いていた。チャーチルは、息子の放蕩で2人の結婚生活がすでに破綻しているのを知っていた。
アメリカからやって来た2人の大物は、チャーチルの実の娘と義理の娘を抱いた。その行為をチャーチルは黙認した。この2人の大物が英国支援に全力を尽くしたことはいうまでもない。
ウィナントもハリマンもハンサムな男であった。2人の娘には不貞の罪悪感はあっただろう。しかし、同時に愛国の行為であるという意識もあったに違いない。チャーチル一族の究極の接待攻勢であった。4人の「不倫」は近現代史の影の部分(歴史の細部)である。
更新:11月22日 00:05