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古坂大魔王「『進撃の巨人』は巨人よりも人間のほうが怖い」

2022年01月09日 公開
2024年12月16日 更新

古坂大魔王(お笑い芸人/音楽プロデューサー)

古坂大魔王

単行本の世界累計発行部数が一億部を超え、社会現象を巻き起こした大人気漫画『進撃の巨人』(作:諫山創・いさやまはじめ)。同作のアニメーションの最終章となる「The Final Season Part 2」が、2022年1月9日(日)24時5分にNHK総合で放送開始される。巨大な壁に守られていた人類と圧倒的な力をもつ巨人との戦いを描いた本作は、魅力的なキャラクターや壮大な世界観に、巧みに仕掛けられた伏線の回収も相まって、多くのファンから熱烈な支持を得ている。

そんな「進撃ファン」の一人として知られるのが、お笑い芸人や音楽プロデューサーとして活躍する古坂大魔王さんだ。2016年にプロデュースしたピコ太郎のYouTube動画「Pen Pineapple Apple Pen(PPAP)」は世界的な話題となり、まさしく日本という「壁」を越えた。お笑いや音楽の分野でグローバルに活動する古坂さんに、『進撃の巨人』の魅力や意義についてうかがった。(聞き手:Voice編集部・中西史也)

※本稿は『Voice』2022年2⽉号より⼀部抜粋・編集したものです。

 

巨人よりも怖い「ネタバレ」

――古坂さんが『進撃の巨人』にのめりこんだきっかけは何だったのでしょうか。

【古坂】いまから10年以上前のことですね。当時は「このマンガがすごい!2011」(オトコ編)で1位に選ばれるなど、ちょうど話題になり始めていたころでした。「一回読んでみようかな」と何気なく手に取ってみたところ、最初に「巨人」を目にしたときのインパクトが凄かった。正直、絵は若干粗い」とは感じたのですが、それも気にならないほどの衝撃を受けたんです。

そうして『進撃の巨人』を読み進めていると、やがてTVアニメが始まりました。こちらも観てみたら、作画やアニメーション、音楽に圧倒されました。当時は漫画もアニメもまさに「進撃」する勢いで話題になっていて、僕も気づいたらハマっていましたね。

――2021年6月には、単行本の最終巻となる34巻が発売されました。10年以上にわたって紡がれた物語が完結しましたが、古坂さんは読まれましたか。

【古坂】じつは、あえてアニメで放送されたところまでしか読んでいないんですよ。せっかくなら、アニメを堪能したあとに漫画を読もうと思っていて。最終巻も読まれましたか?

――はい。取材中にうっかりネタバレしないように気をつけます(笑)。

【古坂】ぜひ、そうしてください(笑)。最終巻が出たときはネットを中心にかなり話題になっていましたから、情報を遮断するのに苦労しましたね(苦笑)。

 

「じつは人間がいちばん怖い系の話」が問いかけるもの

――古坂さんが考える『進撃の巨人』の魅力について、あらためて教えていただけますか。

【古坂】いちばん怖いのは巨人ではなく、じつは人間であると思い知らされるところですね。物語は序盤は「巨人に抗う人間」の構図で展開されていくのですが、徐々に描かれていくのが、巨人を操る人間の姿です。僕は「じつは人間がいちばん怖い系」の作品が好きなんですよね。

大好きな『ウォーキング・デッド』シリーズも、ゾンビよりも人間のほうが恐ろしいと思わされますし。現実世界でも、人間は自分たちよりも身体が大きい熊やサメよりも、同じ人間に命を奪われる数のほうが圧倒的に多いと言います。

もちろん、作品は個々人が自由に解釈すべきだと思います。『進撃』も僕のような人は「人間のほうが怖い」と感じても、「いや、やっぱり巨人が怖い」と思う人もいるはずです。このように多様な楽しみ方ができるからこそ、『進撃』は世界中の人から愛されているのではないでしょうか。

――シーズンによって、エレン(・イェーガー、本作の主人公で「進撃の巨人」「始祖の巨人」「戦鎚の巨人」の力を有する)たちが戦う敵の対象が変わるのも興味深いですね。

【古坂】戦闘シーンの描写が凝っているのも『進撃』の大きな魅力です。原作者の諫山さんは格闘技に詳しいようで、だからこそ息をのむような闘いを描けるのでしょう。たとえば巨人同士の戦闘は、互いにマウントポジションを取ってから相手の腕を持って腕ひしぎ十字固めに入ったり三角締めをしたりと、まるで人間同士のような闘い方をするんです。

エレンは総合格闘技、アニ(・レオンハート、「女型の巨人」)は軍隊格闘技、ライナー(・ブラウン、「鎧の巨人」)はレスリングのようなタックルを得意としているように見え、細かい闘い方に違いがあってとても面白い。

――私を含め、そこまで気づいていない読者は少なくないかもしれません。格闘技にも精通している古坂さんならではの視点ですね。

【古坂】とくに男性の漫画家の多くは、戦闘シーンには各自のこだわりがあるんじゃないかな。闘いをかっこよく描きたいというのは、男の夢かもしれない(笑)。

僕も漫画を読むときには、どうしても戦闘シーンの描かれ方を意識してしまいますから。『進撃』で言えば、最初に「女型の巨人」が構えるポーズを取ったときは、その立ち居振る舞いから高度な知性をもつ巨人がいると伝わってきたので、衝撃を受けましたね。

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