2021年07月09日 公開
2023年07月12日 更新
――大阪の現状を見ると、コロナの感染再拡大を受けて吉村洋文知事への批判が高まっています。とくに二度目の緊急事態宣言を今年2月末で解除したのが早すぎたために感染再拡大を招いた、との意見が聞かれます。橋下さんはどう評価しますか。
【橋下】結果だけを見れば、たしかに大阪府が2月末時点で宣言解除を政府に要請した判断が間違っていた「可能性」は否定できません。
しかし、絶対的な正解をめざす「実体的正義」ではなく、適切なプロセスをとれば正当性があると見なす「手続的正義」の考え方に基づけば、吉村さんがとったプロセスは適切だったと僕は思いますよ。
大阪府の新規感染者数は2月の下旬には50~100人の水準で推移しており、政府が宣言解除の目安とする「ステージ3」の基準よりも下回っていました。その後、大阪府は専門家同士をフルオープンで議論させ、その内容を踏まえて宣言解除を政府に要請したわけです。
そもそも法律上、緊急事態宣言の発出や解除の権限と責任は政府にあるので、吉村さんの責任だけを追及するのはお門違いもいいところです。
メディアや学者に代表されるインテリは、感染再拡大の結果を受けて「解除が早すぎた」と後出しでバッシングしています。しかし知事の立場からすれば、苦境に喘ぐ飲食店など、経済的影響を含む総合的な判断を下さなければならないわけです。
そうした点を度外視して、批判のための批判に明け暮れていては、いつまでたっても建設的な議論なんて生まれませんよ。
――たしかに、手続的正義の観点から大阪府のコロナ対応を客観的に評価するメディアは見られなかったように思います。
【橋下】むしろメディアが指摘すべきは、大阪府が二度目の緊急事態宣言解除後に、どういう社会経済活動のブレーキを踏んだかというプロセスについてでしょう。
大阪府では今年3月に20~30代の若い世代の新規感染者数をモニタリングする「見張り番指標」を設定しました。すると、同月中旬にはすでに「見張り番指標」が基準値を超えてしまった。吉村さんも当然、その時点で感染再拡大の危機感をもっていたはずです。
ただしここが問題で、二度目の緊急事態宣言が解除された直後ということもあり、当時の大阪府は方針をやや経済活動のほうに傾けていた気がします。
感染拡大に警鐘を鳴らす専門家と、経済活動を重視する専門家の双方を交えて議論を行なっていたこれまでのプロセスが、このときばかりは疎かになっていたように思う。メディアや学者などのインテリが大阪府の対応を批判したいのならば、二度目の緊急事態宣言解除要請の決断よりも、解除後のプロセスのほうを見るべきだったんです。
更新:11月23日 00:05