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人材不足を露呈した「旧来の公務員モデル」

2021年06月18日 公開
2021年07月07日 更新

松井孝治(慶應義塾大学総合政策学部教授)

松井孝治

我が国が抱える問題、改善すべき点は何か。その一つに公共を担う人材の不足が挙げられるのではないか。

慶應義塾大学教授の松井孝治氏は、「新しい公共」を目指すべきだと提言する。民による公共への貢献を推進することで、今の日本の難局を乗り越えるエネルギーになるのではないかという。この社会を実現するための改革案とは。

※本稿は『Voice』2021年7⽉号より⼀部抜粋・編集したものです。

 

「新しい公共」をめざせ

いまの政府与党に欠けているもの、そして我が国がこれから推進して改善していくべき道は何だろうか。コロナ禍を乗り越えて、私は、「新しい公共」をめざすべきだと考えている。

すなわち、政治・行政を政治家や公務員だけが担うのではなく、民間を含むあらゆる人びとが支える仕組みだ。それが最終的には、日本が新たな時代の民主主義の盟主として国際社会で存在感を発揮することに繋がると確信している。

まず具体的に提起したいのが、潜在的な国家資格保有者の活用である。たとえばコロナ対応でいえば、当初より指摘されている問題の一つが看護師不足である。

それを受けて、看護師経験はあるが現役を退いた方の臨時的な動員も行なわれているが、この動きをさらに加速させるべきだ。

それでも人手が足りない場合は、看護師資格を有していなくとも、たとえば親和性の高い介護士資格を有する方を集中的にトレーニングし、サポートに回ってもらうのはどうだろうか。

なにも現在の仕事を辞めてもらう必要はない。週に1日か2日サポートしてもらうだけでも、現職の看護師に一時的でも休息を与えられるし、医療現場の窮状が幾分かは改善されるはずだ。

いざというときの必要な防衛力を確保するために設ける、予備自衛官制度のイメージに近いだろうか。

ここで参考になるのが、江戸時代の町火消から現在まで連綿と受け継がれている消防団制度だ。火災が起きたとき、職務として対応に当たるのは公務員組織である自治体の消防署だが、初期消火やその後の救助活動においては消防団が関わるケースがある。

広範囲に火の手が回り、消防士だけの消火に限界がある場合には、一般市民で構成された消防団員が加勢するのだ。

現に阪神・淡路大震災(1995年1月17日)では、地域住民の生活状況を日頃から把握していた消防団が、救出活動でめざましい活躍をみせたという。

歴史的に木造住宅が多く、火災に苦しめられてきた我が国の知恵として、消防団が消防署を支え続けてきたのだ。このような民による公共への貢献領域を各分野で拡充していくことで、日本の潜在能力を引き出すことができるはずである。

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