台湾でデジタル担当大臣を務めるオードリー・タン氏は、近隣店舗のマスク在庫を把握できる「マスクマップ」の開発を主導したことで世界的評価を得た。
一方で日本でも、デジタルの力でコロナに向き合う動きがある。一般社団法人コード・フォー・ジャパンは2020年3月、東京都「新型コロナウイルス感染症対策サイト」を開発し、本サイトは「2020年度グッドデザイン金賞」を受賞した。
なぜ同サイトが評価されたのか、市民とデジタルの力によって我々は難局を乗り越えられるか――。コード・フォー・ジャパンの代表理事を務めるシビックハッカーの関治之氏に聞いた。(聞き手:Voice編集部・中西史也)
※本稿は『Voice』2021年2⽉号より⼀部抜粋・編集したものです。
――本誌(『Voice』2021年1月号)のオードリー・タン台湾デジタル担当大臣へのインタビューで、日本の注目すべきシビックハッカー(政府による公開データを活用してサービスを開発するプログラマー)として、関さんの名前が挙がりました。タン氏とは普段から親交があるのですか。
【関】紹介いただいて光栄です。オードリーさんとは、2016年5月に台湾で開催された「G0V summit2016(ガブゼロサミット)」で初めてお会いして以来、折に触れて交流しています。
物腰が柔らかく、それでいて話すとクレバーで説得力がある。デジタルだけではなく哲学的な視点ももつ、底知れない方ですね。
――タン氏は、台湾で新型コロナ感染が流行し始めた2020年2月に、近隣店舗のマスク在庫を把握できる「マスクマップ」の開発を主導したことで知られます。
一方で関さんが代表を務めるコード・フォー・ジャパンも同年3月、東京都の「新型コロナウイルス感染症対策サイト」を開発、公開しました。どのような経緯だったのでしょう。
【関】東京都副知事の宮坂学さん(ヤフー株式会社元社長)が率いるチームから作成の依頼があり、お手伝いすることになりました。私はもともとヤフーに勤めていたので、宮坂さんとは面識があったんです。
サイトの開発には、コード・フォー・ジャパンのコアメンバーだけではなく、他のエンジニアや東京都の職員など、合わせて500人以上が参加しました。ここでは、誰もがサービス(アプリ)開発に参加できる「オープンソース」を使用しています。
世界中のエンジニアが活用するプラットフォーム「GitHub(ギットハブ)」に設計情報を公開することで、直接顔を合わせていない世界中の人から改善の提案をいただきました。そもそも行政がオープンソースを使うのは珍しいことですから、今回の試みが良い先例になれたらと思っています。
――本サイトのシステムの改善にタン氏が「降臨」したことも話題になりましたね。
【関】オードリーさんが参加してくれたおかげで、チームの士気が格段に高まりました。世界中からコメントや反響をいただき、一時はGitHubのなかで「勢いのあるプロジェクト」のランキングで一位になっています。
東京都「新型コロナウイルス感染症対策サイト」(2021年1月5日確認時点、https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)
――本サイトは「2020年度グッドデザイン金賞」を受賞しました。どういった点が評価につながったと考えていますか。
【関】サイトの「見せ方」はかなり重視しました。宮坂さんとも共有している問題意識ですが、いかに情報が充実していても、ユーザーに見てもらえなければ意味がない。そのため今回は、最新の感染動向や相談件数などを、グラフを用いてわかりやすく表現したつもりです。
あとは先ほども申し上げた、オープンソースを使用した点は大きかったでしょう。サイトのコードを誰もが複製することができるため、他の自治体でも活用されています。
最終的には全都道府県で採用され、海外も含めて約80カ所で使われました。市民と行政との相乗効果を生めたのではないかと思っています。
更新:11月23日 00:05