2020年11月28日 公開
2022年03月02日 更新
トランプ、バイデン両氏のどちらが大統領になっても、米中冷戦は続くと見られる。ただ、貿易摩擦よりも、もっと根深い問題がある――。そう指摘するのは、大人気世界史科講師の茂木誠氏だ。その問題とはいったい。
※本稿は、茂木誠著『世界の今を読み解く「政治思想マトリックス」』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
両国の関係を悪化させている原因は貿易以外にもあります。日本ではあまり報道されていませんが、もっとも根深いのは宗教問題です。そもそも、アメリカという国が「理想のキリスト教国家を建設しよう」という信念に燃えた人々によって建国されました。
アメリカ大統領は就任式で聖書を片手に宣誓を行いますし、熱心なクリスチャンの割合は、欧州諸国より遥かに多いのです。この宗教国家アメリカと、共産主義に基づく無神論国家の中華人民共和国では、価値観が合わないのは当たり前です。
2018年10月4日、マイク・ペンス米副大統領が演説を行い、経済・外交・軍事の多方面から約1時間にわたって中国批判を展開しました。その中で彼が厳しく追及したのが、中国政府における宗教弾圧です。
ペンス氏の人物像を詳しく見てみると、その理由がよくわかります。彼は、アメリカ国内では少数派のカトリック教徒ですが、『聖書(福音書)』の教えを絶対視する点で、プロテスタントの保守系キリスト教徒(福音派)の支持を受けています。
福音派は、『聖書』の教えに反する人工中絶や同性愛には反対の立場で、まもなく世界最終戦争が起こり、神が再臨する「終末論」を信じています。アメリカには福音派の人々が約25%いて、副大統領のペンス氏の背後には、この固い地盤があるのです。
気に入らなければすぐに解任されるトランプ大統領の側近は、イエスマンばかりという印象が強いですが、トランプ大統領も、政権支持率の鍵を握るペンス氏をないがしろにはできないようです。では、中国でどのような宗教問題が起きているのでしょうか。
更新:11月21日 00:05