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進まぬ「東京一極集中」解消…なぜ“住みにくい東京”に京阪神からも人が流入するのか?

2020年10月30日 公開
2022年07月04日 更新

曽我謙悟(京都大学大学院法学研究科教授)

曽我謙悟氏

コロナ禍で在宅勤務やリモートワークが推奨され、人々が東京から地方へ移るという見かたがある。しかし、戦後から続く「地域間再分配」制度は、メスの入れようのない根深さだった――。

※本稿は『Voice』2020年11⽉号より⼀部抜粋・編集したものです。

 

半世紀以上解決されない東京一極集中

日本には2つの社会がある。“東京”と“それ以外”だ。東京は富を生み出す。世界とつながり、競争している大企業が多く存在している。多様性も高い。他者との交流から文化・芸術まで、豊かな機会を享受できる。かくして東京には人が集まる。

他方、東京以外の社会は閉じた社会だ。地元のつながりが、経済、社会、政治を動かす。三世帯同居の多さなど、家族のつながりが子育てなどを容易にしている面もあるが、若年層の流出も大きい。

こうした2つの社会が存在していることを、多くの人々は問題視してきた。自民党政権も、東京一極集中の是正を長く主張し、安倍長期政権も地方創生を掲げ、その是正に努めてきた。

コロナウイルス禍は、この事態を変えるのか。たしかに、災禍は時に都市構造や国土構造を変える。1923年の関東大震災では、東京からの人口流出が生じ、1925年には合併を経た大阪市の人口が東京市を抜いた。2011年の東日本大震災も多くの人々に移動を強いた。

今回も、都市部における感染症への脆弱性を嫌い、地方へ移住する人や、企業の移転が散見される。人々の意識も変わりつつあるようだ。

今年六月に、内閣府意識調査(「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」)で、「地方移住への関心に変化はありましたか」と尋ねたところ、関心が(やや)高くなったと答えた人は、三大都市圏の全年齢で15.0%、東京圏の20代では27.7%となる。

今年7月の財務総研のレポートのように、こうした状況が一極集中を緩和する契機となるという予測も多い(奥愛・永井里奈「新型コロナ感染症拡大で考える東京への人口一極集中とコロナ後の変化」)。

しかしそう簡単ではないだろう。遡れば、この問題は、1960年代に、都市部の過密と農村部の過疎が問題視され、国土の均衡ある発展をめざす国土計画がつくられたところから始まる。

国土計画は5次にわたり改正を重ねながら、その目標を追求してきた。1980年代以降、大阪から東京への本社移転が増えたことで、「大都市圏への集中」から「東京一極集中」へと是正の対象は絞られたが、問題の構造は同じである。

したがって、1960年代の国土計画から、現在の地方創生に至るまで半世紀以上、政府は都市とそれ以外の格差是正に取り組んできた。しかし、一極集中は強まるばかりである。

では、なぜ失敗を続けてきたのか。それは、本当のところ、東京以外の人々も東京の人々も、“現状”を変えるインセンティブを見出せていないからではないか。

ならば解き明かさなければならないのは、そもそも東京以外の人々、東京の人々それぞれが、現状をどう捉え、どのように評価しているかということだ。

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