2020年10月12日 公開
2022年01月13日 更新
他にも本書では、「大阪都構想をなぜやらなくてはいけないのか?」という疑問に、東参議院議員が丁寧に答える形で書き記されている。
一番読み応えがあったのが、第五章の「大阪都構想はどうして誤解を招くのか?」のところだ。都構想の反対派の過激な行動に苦慮する話が書かれているのだが、そのような反対派の意見を強くしてしまった要因のひとつとして、東参議院議員は「維新の会は誤解を招きやすい政党である」と、本書で素直に認めているのである。
しかも、「大いに反省するべき点」だと書いた上で、「大阪都構想は、維新の会が好きとか嫌いとかという感情から、一度切り離して考えて欲しい」と述べており、純粋に行政の改革案として、大阪都構想を見て欲しいという強い思いが伝わってくる。
この文章を読んだ時、3年前に政党のキャッチコピーを辛辣に評価した際、日本維新の会の関係者に「正直なことをいろいろ書いてくれてありがとう」と言われた時のことを思い出してしまった。
考えてみれば、都構想が実現すれば、最も職を失うのが、議席数で過半数近くを占める大阪維新の会の議員たちである。大阪市の松井市長に限っては自分の職がなくなる可能性があるのにも関わらず、大阪市をなくそうとしているのだから、自分で自分の首を切りに行っているようなものである。
そこまで覚悟を決めて都構想を実現しようとしているのだから、「じゃあ、やってみろよ」と、彼らの思うようにやらせてみたい気にもなってしまう。
「千葉県民のお前が言うんじゃない!」とお叱りの言葉を受けるかもしれないが、どこに向かって進もうとしているのかさっぱり分からないタレント知事の元で暮らす県民にとっては、少しだけ大阪が羨ましく思えてしまうのが本音である。
本書は大阪市に住む人たちが読むべき本かもしれないが、他の都道府県の人が読んでも「自分の住んでいる街は大丈夫だろうか」と、真剣に行政のことを考えるきっかけになる良書と言える。
読後に大阪に対して軽いジェラシーが湧いてしまい、大阪という街が好きになってしまう副作用もあるが、その点もふくめて、ぜひみなさんに読んでいただきたい行政が学べる異色の一冊である。
更新:12月04日 00:05