2020年09月20日 公開
2023年01月30日 更新
8月10日、香港で10名の国安法違反の逮捕者が出た。『蘋果(ひんか)日報』(香港の民主派支持の新聞)の社主である黎智英(ジミーライ)などである。その逮捕翌日、先ほどの男性は『蘋果日報』を10部買ったという。
「できることは少ないかもしれませんが、諦めません」
この日の夜、日本でも有名な周庭(アグネス・チョウ)も逮捕された。外国勢力との結託の罪だった。彼女は香港衆志で日本や海外での広報活動を担当していたのだが、6月30日以後、そうした活動は行なっていない。国安法は適用範囲が曖昧なのだ。
「4回の逮捕のなかでいちばん怖かった、いちばんきつかった」
大方の予想に反して、彼女は翌日、保釈された。これは、香港の刑事訴訟法に立脚しての措置である。
「拘束されていたときは『不協和音』(アイドルグループ欅坂46の曲)の歌詞が頭に浮かんでいました」
彼女からこの曲名を聞くのは、筆者は2回目だった。2018年3月、立法会補欠選挙への立候補を取り消され、他の民主派候補の応援に回ったとき、周庭は『不協和音』に繰り返し勇気づけられたという。
「絶対沈黙しない 最後の最後まで抵抗し続ける」
保釈のニュース以降、日本でこの曲は周庭と関連づけられるようになった。外国に助けを求めることが「外国勢力との結託」として罪になるなか、日本のアイドルのヒット曲は、香港人の信念を何よりも日本人に語りかけているのだ。
香港人の強(したた)かさは、こうした、抑圧者の思惑を軽く飛び越えるところにこそある。
国安法、それは香港を殺すことなど、まったくできていない。
〈文中、敬称略〉
更新:11月24日 00:05