2020年07月09日 公開
2020年07月11日 更新
――具体的に、どういった企業支援策を講じるべきでしょうか。
(アトキンソン)仮に企業に支援金を支給するにしても、生産性の現状の水準とこれからそれをどう高め、労働者の賃金をいかに上げるか、おおよそでもいいので今の一人あたりの生産性とそれを高める計画を企業に提出させ、それを金融機関がチェックする仕組みが必要です。
日本の厳しい財政状況は、人口減少によって今後ますます加速します。GDP(国内総生産)が増えていない状況で際限なく財源を使うことは、将来世代への負担をいたずらに増やすばかりです。
――いまは危機なのだから国債を大量に刷ればよい、と主張する識者もいます。
(アトキンソン)完全雇用に近い日本では、財政出動だけでは特効薬になりません。産業構造の改善策がないままでは逆効果です。繰り返し強調しますが、次世代への負担を考えれば野放図な措置はとるべきではありません。現実問題として、財務省もその考えは採用しないでしょう。
忘れてはいけないのは、危機はコロナだけではないということ。
もしも近い将来に大災害が起これば、その経済的打撃は計りしれない。公益社団法人土木学会のレポート(「『国難』をもたらす巨大災害対策についての技術検討報告書」)によると、経済被害と資産被害を合わせた額は首都直下型地震で778兆円、南海トラフ巨大地震で1410兆円に及ぶといいます。
日本がコロナと震災の二重苦に直面したとき、放埒な財政政策のしわ寄せが未曾有の危機をもたらす事態は避けられません。
更新:11月24日 00:05