2019年08月16日 公開
2019年08月17日 更新
人口激減に直面する日本がとるべき道は何か。デービッド・アトキンソン氏は、国民の生産性を高まるために全国一律の最低賃金引き上げが急務だ、と説く。また外国人労働者による人手確保は「安直な考え」と一蹴。日本在住30年、ゴールドマン・サックス「伝説のアナリスト」が語る、日本の未来とは。
※本稿は月刊誌『Voice』(2019年9月号)、デービッド・アトキンソン氏の「日本の生きる道は最低賃金引き上げしかない」より一部抜粋・編集したものです。
聞き手:編集部(中西史也)
――人口減少に直面する日本の課題として、外国人労働者の受け入れも議論されます。実際に安倍政権は今年4月、改正出入国管理法を施行し、実質的な「移民政策」を採っています。人手不足を外国人労働者で補う政策についてはどう評価しますか。
【アトキンソン】 生産性の向上なしに、ただ日本人が足りないから外国人労働者で代替するのは、安直な考えだと思います。日本の経営者からすれば、海外から安い労働力を受け入れ、賃金を低く抑えたいのでしょう。
しかし賃金が安い労働者を増やせば、価格競争をさらに激化させ、日本の生産性向上を阻害しかねない。
結局、日本人労働者を苦しめる結果に終わる可能性があります。いまだに経済を質(生産性向上)ではなく、量(人間の数)で成長させようとしています。幼稚な考え方です。
――日本の経営者は目先の労働力確保に飛び付く前にやるべきことがある、と。
【アトキンソン】 まさしくそれが、私が何度も強調している最低賃金の引き上げなのです。ただ、賃上げはあくまで生産性の低い会社を刺激するための手段にすぎない。
日本経済の構造的問題は、労働者の給料が安いことに加え、中小企業、とりわけ社員20人未満のミクロ企業で働く労働人口の割合が、約20%ときわめて高いことです。
生産性を向上させるために私は、こうしたミクロ企業を合併・統合すべきだと考えています。企業が集約されてその規模が大きくなれば、設備投資に割けるお金が増えて、生産性が自ずと向上するからです。
日本は高度成長期に、人口の増加とともに企業の数を増やしすぎました。人口激減時代を想定すれば、それに伴い企業の数を絞っていくのは当然です。
地方銀行や自治体が合併・統合を繰り返しているように、規模が小さく生産性の上がらない企業を集約する必要がある。生産性の問題は、サービスや働き方といった枝葉末節の話ではなく、企業の規模の問題なのです。
更新:11月21日 00:05