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天安門事件、新型コロナ、香港デモ…騒動の裏で進む「中国共産党のメディア支配」

2020年06月04日 公開
2020年11月10日 更新

加藤青延(NHK専門解説員・武蔵野大学教授)

 

香港デモの背後にチラつく天安門事件での失策

なぜそこまで徹底した国民監視にこだわるのか。それは裏返してみれば、中国共産党が、31年前に起きた天安門事件の呪縛からいまだに逃れることができず、常にその亡霊におびえていることを物語っている。

言論の自由が保障されてきた香港では1年前から、中国共産党の強権支配が及ぶことを懸念する大規模なデモが続いてきた。新型コロナウイルスの感染拡大で今年は一時下火になりかけたが、その隙をついて当局がデモの参加者を一斉摘発。

さらに5月には中国の国会、全人代が香港議会の頭越しに国家安全法規を制定することで香港の自由を縛ろうとしたことから、抗議活動の火が再燃している。

香港問題は、米中の対立に拍車をかける形にもなった。だが習近平政権は「香港は中国の内政問題であり、外国勢力の干渉は許さない」と強気の姿勢を崩さない。

それは、香港の抗議デモを放置すれば、中国本土に波及しかねないことを恐れているからに他ならないだろう。まさに31年前、鄧小平が「北京の民主化デモを放置すれば、やがて全国規模に動乱が拡大し、共産党政権が崩壊する」として武力鎮圧を決断したときとその意識は変わらない。

習近平が近年、すべての権限を一手に握り、その強権を振りかざしても他の指導者から大きな抵抗がないのも、最高指導部が足並みをそろえなければ、中国共産党の独裁体制は早晩崩壊するに違いない、という強い危機感が共通認識としてあるからだろう。

それは天安門事件の時に、党指導部が民主化運動支持派と反対派に割れたことが、運動をより勢いづかせ、最後には戒厳令発動・軍隊投入という最悪の事態を招いた彼らの痛恨の「失策」を強く意識したものであることは間違いない。

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