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「誰のための自粛か」在欧ジャーナリストが指摘する、欧米と日本の考え方の違い

2020年05月15日 公開
2020年07月09日 更新

宮下洋一(ジャーナリスト)

コロナ禍でEUが分断

スペインは、現在、フランスに次ぐ世界第2位の観光大国で、年間8340万人が世界各国から訪れている。OECD加盟国のなかでも、国内総生産(GDP)に占める観光の割合が12.3%と最大で、その額は約1480億ユーロ(約17兆5000億円)に上る。

非常事態宣言以降、経済活動が止まり、観光業に携わる人びとをはじめ、労働者の90万人がすでに失職し、260万人は一時解雇状態にある。

家賃を払えるのか、家族を養えるのか、スペイン労働者2000万人の不安は、日々、募るばかりだ。サンチェス首相は2000億ユーロ(約24兆円)の支援策を打ち出したが、具体策は見えてこない。

外出禁止令と補償はセットであるべきだが、本当に補償があるのかも、いまだ曖昧な状態だ。

3月25日、スペインやイタリアなどEU9カ国が、コロナ対策資金調達に向けた「ユーロ債」の発行を呼びかけた。だが、オランダやドイツが否定的な反応を示した。

なぜパンデミック(世界的大流行)に対応できる国家予算を貯えてこなかったのか、という批判の声が上がったのだ。

スペインが経済危機だった当時も、オランダ財務相(当時)は、「女やアルコールに使う人たちに貸す金はない」とスペインに対する暴言を吐いたことがある。この観念がいまでも尾を引いている。

ポルトガルのアントニオ・コスタ首相は、「ウイルスをつくったのも、運んできたのもスペインではない。他国を見捨ててウイルス問題を解決しようとする国があるならば、それは裏切りだ」と憤慨した。

だが、ポルトガルがスペインを庇うのは、自国が医療崩壊した際に、EUの援助を必要としているからかもしれない。EUのパワーバランスが、パンデミックでさらに明らかになったことは確かだ。

欧州は自国ファースト主義に走り、さらなる分断をもたらしているといえる。

スペインで、死者が1万5000人を超えた4月9日、サンチェス首相は国会で、「協力できないEUが危機に陥っている。緊縮も削減も何の政策もない」と危機感を募らせた。

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