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新型コロナ、米国の指導力の穴を狙う中国の「マスク外交」

2020年05月11日 公開

詫摩佳代(東京都立大学法学政治学研究科教授)

中国への敵対心と絡み合うWHO批判

WHOへの批判が高まるなかで、最も懸念されるべきはアメリカの態度であろう。

トランプ大統領がWHOへの拠出金の停止を発表した背景には、政治的に対立する中国への批判の意図と、世論による政権批判をかわす二つの狙いが、WHO批判と結び付いているという事情がある。

過去にもアメリカはパレスチナのWHO参加やWHOが発表した医薬品リスト等に抗議する目的で、拠出金の支払い停止をちらつかせては当機関に圧力をかけてきた。

アメリカの常套手段とはいえ、WHOは過去にそうであったように、最大の拠出金負担国アメリカに対して何らかの譲歩を余儀なくされるだろう。

その譲歩がどのようなものになるかは注視が必要だが、仮に感染症協力の情報塔であり、多国間フォーラムである組織の息の根を止めることになれば、必ずやアメリカそして世界の困難・苦悩として身に降りかかってくる。

先述のとおり、アメリカのWHO批判は、当機関と良好な関係にある中国への敵対心と深く絡み合っている。

2003年に流行したSARSは今回と同じく中国発の新興ウイルス感染症であったが、アメリカは中国に専門家を派遣するなど、米中の緊密な連携が見られた。

他方、今回は冷え込む米中関係を反映して、アメリカの専門家派遣の申し出が、中国に受け入れられることはなかった。

3月末に開催されたG7外相会合でも、4月初旬に開催された国連安保理の会合でも、アメリカが「武漢ウイルス」という呼称にこだわった結果、いずれも共同声明並びに決議を採択するに至らなかった。

ギクシャクする米中関係とは対照的に、アメリカと台湾は医療支援や外交支援等をめぐり接近するなど、米中対立は二国間関係に止まらず、米台、中台関係を含む幅広い国際関係に影響を及ぼしつつある。

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