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新型肺炎だけではない、感染症への危機感が薄い日本人

2020年04月19日 公開
2022年07月08日 更新

福田充(日本大学危機管理学部教授)

新感染症に対する危機感の欠如

福田充

空白だったのは、政府だけの責任ではない。国民自身がこうした新しい感染症をどのようにとらえていたか。

2019年に実施した福田充研究室のアンケート調査結果を見ると(図1)、「新型インフルエンザ等の感染症」に対するリスク不安は、「非常に不安である」とする回答が21.3%と、大地震(58.7%)、原子力発電所事故(33.0%)、テロ事件(31.0%)、戦争(28.7%)などの危機と比べると相対的に低いことがわかる(福田、2020、※1)。

日本人の新感染症に対するリスク意識は低かったのである。新感染症に対する危機感が欠如していたのは政府だけではなく、日本国民も同様である。

日本の自治体や企業がどの程度、新感染症を想定して、危機への準備をしていたかを示したのが図2である(福田ら、2016、※2)。

福田充

これを見ると、「新型インフルエンザなどの感染症」に対して、57.3%の自治体が危機対応を検討しており、一部上場企業など大企業の78.5%が危機を想定していたことがわかる。

全国の自治体の約半数しか新感染症対策を想定しておらず、マニュアルももっていなかったことは驚くべき数字であり、一部上場企業などの大企業において8割弱の状況であれば、中小企業では新感染症対策は遅れているであろうことが推測できる。

政府と同様に、日本人個人も、自治体も、企業も、新型コロナウイルスのような新感染症への対策は遅れていたのである。そのことは次なる課題として決して忘れてはならない。

【参考文献】
・福田充(2010)『リスク・コミュニケーションとメディア~社会調査論的アプローチ』(北樹出版)
※1、福田充(2020)「危機管理学におけるオールハザード・アプローチの理念」『危機管理学研究』,日本大学危機管理学部危機管理学研究所, 第4号, pp.4-17.
※2、福田充編(2016)『危機管理学の構築とレジリエントな大学の創造のための総合的研究』,平成27年度日本大学理事長特別研究報告書

■福田充(日本大学危機管理学部教授)
1969年、兵庫県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(政治学)。2016年4月より現職。専門は危機管理学、リスク・コミュニケーション。内閣官房委員会委員、コロンビア大学戦争と平和研究所客員研究員などを歴任。現在、内閣官房新型インフルエンザ等対策有識者会議委員。著書に『リスク・コミュニケーションとメディア』(北樹出版)、『テロとインテリジェンス』(慶應義塾大学出版会)など。

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