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新型肺炎だけではない、感染症への危機感が薄い日本人

2020年04月19日 公開
2024年12月16日 更新

福田充(日本大学危機管理学部教授)

※画像はイメージです。

世界で猛威を振るう新型コロナウイルス。日本で急速に感染拡大が進むなか、日本大学危機管理学部教授で、内閣官房新型インフルエンザ等対策有識者会議委員を務める福田充氏は、日本政府の対応のみならず、日本人の感染症に対する危機意識が欠ける現状を指摘する。

本稿は月刊誌『Voice』2020年5月号、福田充氏の「新型肺炎、緊急事態宣言を恐れるな」より一部抜粋・編集したものです。

 

日本のインテリジェンスが問われている

中国において「新型コロナウイルス」による肺炎が最初に確認されたのはいつか。昨年2019年11月か、12月かという不明瞭な状態で、この問題は発生し、推移した。

中国湖北省武漢で原因不明の肺炎が発生しているという事態から、その原因がコロナウイルスである可能性が指摘され、ついに「新型コロナウイルス」という呼び名で世界に認知されるまで、初期の貴重な時間が、「静観」という態勢で浪費された。これこそが新感染症が発生したときの最初の課題である。

具体的には2019年12月中旬から2020年1月中旬にかけての約1カ月間、日本政府は、内閣官房は、外務省は、厚生労働省は何をしていたか。

この間に、武漢で発生している状況、原因不明の感染症の特性、日本まで感染が拡大する可能性について、情報収集し、分析して評価するというインテリジェンス活動が十分になされていたかどうか、検証されねばならない。

戦争やテロ対策などの安全保障の分野で語られがちな、このインテリジェンス活動は、感染症のパンデミック(世界的大流行)をはじめとして、気候変動などの環境問題、グローバルな経済危機など、多様で大きな「危機管理」の全体をカバーするものでなくてはならない。

戦後日本は欧米先進国と比べて、つねにこうした安全保障におけるインテリジェンス活動や危機管理の弱さが指摘されてきたが、それは戦争やテロリズムに限ったことではなく、こうした感染症の発生と流行においても同様のことである。

インテリジェンス活動の弱さこそが日本の危機対応の遅れに直結することを、今回の新型コロナウイルスにおいても肝に銘じる必要がある。

中国が初期において感染拡大状況を世界に向けて積極的に情報発信しなかったこと、世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスの感染拡大について過小評価した発表を続けたことなどによって、世界各国と同様に日本も初動対応が遅れた。こういうときにこそ、海外で発生している事態を冷静に分析する独自のインテリジェンス能力が問われるのである。

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「中程度脅威」への対策が不十分だった >

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