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『パラサイト』躍進の背景にある、アカデミー賞側の“思惑”

2020年03月17日 公開
2020年03月17日 更新

伊藤弘了(映画研究者)

人種的多様性をアピールしたいハリウッド

伊藤弘了『パラサイト 半地下の家族』 全国公開中
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アカデミー賞が抱える問題は、国籍や言語だけにとどまりません。2016年に行なわれた第88回アカデミー賞では、2年連続で演技部門の候補者20人全員を白人が独占したことに大きな批判が寄せられました。

アカデミー賞は「白いオスカー」と揶揄され、黒人映画監督のスパイク・リーは授賞式のボイコットを呼びかけました。実際、賞の選定に携わるアカデミー会員の圧倒的多数を占めているのは白人男性でした。

こうした事態を重く見たアカデミー賞は、会員構成の見直しに着手します。新規会員候補としてアジア出身者に意識的に目を向け、あまりに偏った従来の人種構成を是正しようと試みたのです。

こうした動きの延長線上に、今回の『パラサイト』の躍進が位置付けられることは間違いないでしょう。『パラサイト』は韓国映画としてのみならず、アジア映画としても初めての作品賞受賞作品に当たります。

もしもこの作品が2016年以前に公開されていたとしたら、今回ほどもち上げられることはなかったはずです。

その意味では、人種的多様性をアピールしたいアカデミー賞側の思惑と、高品質な映画を持続的につくり続けてきた韓国映画とを結び付ける歴史的条件が揃っていたといえるでしょう。

一方で、『パラサイト』が主要部門で複数受賞を果たしながら、演技部門にはノミネートすらされなかった点には、まだまだ人種の壁が残っているように感じます。

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