2020年03月14日 公開
2020年03月17日 更新
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それでは、『パラサイト』を作品賞に選んだ映画芸術科学アカデミー(すなわちハリウッド映画界)の立場とはどのようなものでしょうか? それを考える前に、まずは韓国映画のなかの『パラサイト』の位置付けを簡単に押さえておきましょう。
私の率直な意見を述べると、『パラサイト』はやや過大評価されているように思います。
たしかに、『パラサイト』は水準を超えて優れた映画です。脚本賞に選ばれるだけの緻密な構成を備えており、それを効果的に表現するための演出や撮影がなされています。
また、俳優陣の演技もきわめて高い水準に達していますし、富裕層一家の暮らす豪邸の見事なセットは映画美術の一つの極限を示しているといっても過言ではないでしょう。
ですが、韓国映画には、これと同等のレベルに達している作品がすでにいくつもあります。
ほかならぬポン・ジュノ監督の過去作でいっても、長らく未解決だった実際の連続強姦殺人事件に想を得た『殺人の追憶』(2003年、主演は『パラサイト』で半地下家族の父親を演じたソン・ガンホ)や、女子高生殺人事件の容疑者にされてしまった知的障害の息子を救うために自力で事件解決を試みる母親を描いた『母なる証明』(2009年)から私が受けた衝撃は、今回の『パラサイト』以上のものでした。
あるいは、近年の韓国映画界では、ヴェネツィア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞した『嘆きのピエタ』(キム・ギドク監督、2012年)をはじめとして、韓国発のゾンビ映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』(ヨン・サンホ監督、2016年)や軍による市民の虐殺が行なわれた光州事件の際の実話に基づく『タクシー運転手 約束は海を越えて』(チャン・フン監督、2017年、主演はソン・ガンホ)、村上春樹の短編『納屋を焼く』を映画化した『バーニング 劇場版』(イ・チャンドン監督、2018年)など、海外の映画祭に出品されて国際的な注目を集めた作品が次々とつくられています。
何が言いたいかというと、韓国映画のレベルの高さはいまに始まったわけではなく、世界水準の作品をつくり出す力を以前から備えていたということです。
更新:11月22日 00:05