2020年01月29日 公開
2023年04月17日 更新
気になることがあったので、質問してみた。
「さっき自販機の前でお客さんから『ジュースの値段がドラッグストアより高い。なんの違いがあるのか?』って聞かれてたとき、『成分が違う』って答えてましたけど……。中身は同じじゃないんですかね?」
すると、張さんは「そうですよ。同じですよ」と当たり前のように答え、こう続けた。
「本当、どーうでもいいことばっかり聞いてくるんですよ。いちいちちゃんと答えてたらキリがないので、適当に答えればいいんですよ」
適当な返事というのは、セールスの場面でも同じだという。
「免税店に連れて行くと、さっきの店より高いとか言う人が必ずいるんです。そしたら『パッケージは同じでも成分が違う』って答えておけば、日本に長年住んでいる人がそう言っているんだからそうなんだろうって思って買うんです」
モノを売るためには多少のセールストークは必要だろうが、張さんのそれは日本人の価値観からすると、少々度が過ぎているように思われた。いや、これぐらいが中国社会のスタンダードなのかもしれないが。
ガイドをするには中国語でのスピーキング能力がかなり必要になるように思えたが、私のような日本語訛りがある者でも大丈夫だろうか。
「大丈夫。むしろ中国語がちょっと下手なぐらいの方が、日本人らしくていいんですよ」と励ましてくれた。
「中国人だとなかなか信用してもらえないけど、日本人が相手だと結構すぐ信用しますよ。最初に信用してもらわないと、全っ然買ってくれないからね」
中国人が一番信用しない人種は中国人、というのはよく聞く話だが、それは海外旅行の際も同じらしい。
時間にルーズな中国人観光客への対処法も教えてくれた。
「『遅れたらタクシーで来てください。日本のタクシーは高いので、1回遅れたら2万円ぐらいかかりますよー』って言うんです。みんなお金払うのは嫌だから、こう言っておけばまず遅れない。
遅れた人がいても、絶対待っちゃダメなんです。1回でも待つと、みんな『じゃあ次は私も遅れて来よう』って考えちゃうから」
さすが、中国人の思考回路を知り尽くしている。ある程度シビアに対応しないと、どんどんつけ込まれてしまうのだ。
店を出る前、張さんに頼まれてツアー名簿を店舗のスタッフに渡した。観光客が免税品を買う場合はパスポートを提示するため、このリストを見れば、どの団体がいくら買い物したかが計算できる。それに応じてガイドへのバックが支払われるのである。うまくできている。
ツアーはまだ前半戦だが、すでに目から鱗が何枚も落ちていく。中国人観光ツアー、恐るべしである。
更新:11月22日 00:05