©かわぐちかいじ・惠谷治・小学館/『空母いぶき』フィルムパートナーズ
2019年5月24日(金)、『沈黙の艦隊』『ジパング』などで知られる漫画界の巨匠・かわぐちかいじ氏原作の映画『空母いぶき』(監督:若松節朗氏)が公開される。
20XX年12月23日未明、沖ノ鳥島西方の島嶼に国籍不明の武装集団が上陸するところから物語は始まる。出動命令を受けた自衛隊初の航空機搭載型護衛艦「いぶき」を待っていたのは、敵潜水艦からのミサイル攻撃だった――。戦後の日本が経験したことのない緊迫の24時間がスクリーンに映し出される。
本作で「いぶき」艦長の主人公・秋津竜太を演じた西島秀俊さんに、映画の見所や自衛隊に対する思いを聞いた。
※本稿は月刊誌『Voice』(2019年6月号)、西島秀俊氏の「国の命運を背負う覚悟を演じて」より一部抜粋・編集したものです。
聞き手:編集部(中西史也)
――本作で秋津を演じるうえで、実際に自衛隊の方々とお話になったようですね。
【西島】 本作は、護衛艦を巡る描写が中心だったこともあり、とくに海上自衛隊・航空自衛隊の皆さんにご協力いただきました。パイロットや整備員、護衛艦「いずも」の艦長にもお話を聞き、実際に乗艦させてもらいました。
印象深かったのは、あるパイロットに「必要な資質は何ですか?」と尋ねると、「ベストな判断を考えて下すよりも、ベターな判断を瞬時に行なえることが、優秀なパイロットの条件の一つです」と答えられたことです。
戦闘機は音速で飛行するため、最善策を深く考えている時間はありません。たとえ次善の策であっても、素早く決断を下すことの重要性を知り、現場の自衛隊員はそれほど過酷な状況に置かれているのだと痛感しました。
――西島さんご自身は、普段から素早い決断が下せるタイプですか。
【西島】 僕は比較的、周りの意見を聞く性格だと思います。衣装やスタイリングも任せてしまうほうです。
でもそこはバランスの難しいところで、人の考えを聞くけれども、自分で決断しなければいけないときも当然ある。スタッフの意見と違い、自らの感覚を信じて決めたとき、失敗に終わることもあります。
それでも、一度は周りの考えを集めて自分のなかに落とし込むことで、いままでは気付かなかった観点を得られることがあるのではないでしょうか。
――衆知を集めるわけですね。
【西島】 加えて、「素直さ」がないと優秀なパイロットにはなれない、という話も聞きました。その言葉が撮影時にも自分のなかでどこかに残っていて、素直さとはどういう意味かを考えていました。
秋津は危機的状況であっても、つねに勝つことを確信しています。皆が「もう駄目なんじゃないか」というときも、彼だけは「いや、勝つ道はあるし、勝てる」と動じない。
一般的にいわれる意味とは違うかもしれませんが、自分の信念に真っ直ぐに向き合っている秋津の姿は、まさに「素直」なのではないかと思っています。
更新:12月22日 00:05