2019年11月11日 公開
2019年11月11日 更新
写真:遠藤宏 取材・文:Voice編集部(中西史也)
※本稿は『Voice』(2019年12月号)「令和の撫子」より抜粋、編集したものです。
神田・神保町にある洋古書専門店「北澤書店」の4代目で、同店舗内にて洋書をインテリアとして提案する「KITAZAWA DISPLAY BOOKS」を展開する北澤里佳さん。
学生のころから古着が好きだった彼女は大学卒業後、大手服飾会社に就職。デザインや服を引き立てる空間装飾を学びながら、VMD(商品の見え方を演出する活動)やアドバイザーとして働き、20代を過ごした。
30歳を目前に自分の仕事を見つめ直そうと思っていた折、久しぶりに顔を出した北澤書店に客の姿はほとんどなかった。
「以前は繁盛している自慢のお店だっただけに衝撃だった。このまま古本文化がなくなるのは絶対嫌だと思った」と北澤さん。
自らの服飾業界での経験を生かし、古書をデザインやインテリアとして活用する試みを開始。
現在は結婚式場やカフェ、個人宅など、場面に応じたデザインのみならず、本の内容まで吟味し、ディスプレイの展示を提案している。
「読むにはとっつきづらい洋古書に、ディスプレイとして『新しい命』を吹き込みたい。見た目に興味をもってから中身を読み、本の魅力に触れることもある」(北澤さん)と、洋古書の可能性について語る。
とはいえ、「出版不況」といわれる昨今、紙の本の未来を北澤さんはどう考えているのか。
「『こうでなくてはいけない』という考えをやめ、時代と共に売る仕組みも変えていくべき。一方で、古本文化継承のために使命感をもって取り組んでいる方も多い。文化を社会全体で支える仕組みも必要だと思う」。
古本の聖地でキラリと輝く装丁美から、出版市場再生の光明を感じた。
■KITAZAWA DISPLAY BOOKS
〒101-0051 東京都千代田区神田神保町2-5-3 北沢ビル2F
Tel:03-3263-0011
mail:displaybooks@kitazawa.co.jp
更新:11月22日 00:05