2019年11月13日 公開
2022年07月08日 更新
【洪】私がいまでも残念に思うのが、われわれが日本との国交正常化の際に請求権に執着したことです。当時、物資があまりにも乏しかったのは事実ですが、蒋介石と毛沢東は日本に賠償を要求しませんでした。それは中国に経済的、物質的に余裕があったからではありません。
戦略的に見ればその後、日本は水素爆弾とICBM(大陸間弾道ミサイル)をもった中国に対し、どれほどのODA(政府開発援助)をしましたか。文化大革命をはじめ、数多くの野蛮な行為を行なった共産党に対する支援に、日本の誰も異論を唱えませんでした。それを見ると、国交正常化交渉時の韓国がなぜ請求権を放棄できなかったか、という一種の悔恨を感じます。
【李】朴正煕将軍がクーデターの直後、訪米の途中で日本に立ち寄ったとき、「われわれは過去にとらわれず、請求権問題に執着しない」と発言しました。
ところがこれに対して韓国内で大騒ぎが起き、朴正煕将軍は慌てて発言を取り消さざるをえませんでした。
中国は果敢に放棄したのに、戦争の主体でも参戦国でもなかった韓国が、日本人たちの残した多くの財産を目にしながら、補償を当然と見なす思いはいったいどこから起きたものなのか。
この物質主義的な欲求は、一つの宿命のようなものだったと思います。韓国人の精神文化の深い根に何があるのか。私は『韓国経済史』という本で疑問を提起したことがあります。
【洪】私は請求権問題を見ながら、適切な比喩なのかわかりませんが、ベトナム戦争参戦者の一部が「自分が当時もらうべきだった戦闘手当を国が奪った」として起こした返還運動を思い出しました。「ベトナム戦争参戦者たちの国家に対する追加補償要求に反対する運動」でもしなければ、と思ったほどです。
【李】国家のために参戦したら名誉なのに、その名誉と勲章をお金に換算するなんて話になりません。李承晩大統領は、請求権を必ず要求するつもりはなかったようです。
李承晩大統領の最大の関心事は、日本が再び韓半島へ来るときに備えることでした。たしかに日本に対する請求権について調査するよう命じましたが、それは日本から請求権が出されたときに対応するためであり、李承晩政権は日本に請求権を金額として提示したことはありません。
更新:11月22日 00:05