【河野】 私は、日本の軍事的な役割を引き上げ、日米同盟をできるだけ双務的にすることによって、アメリカ側の不公平感はかなり軽減されると考えています。
今年6月にホルムズ海峡で日本のタンカーが襲撃された際、トランプ大統領は「タンカー防衛は自国で行なうべき」と発言しましたが、当然のことです。
有志連合(海洋安全保障イニシアチブ)についても、「アメリカに付き合わされる」といった発想はやめて、国益のために利用できるのであれば参加する、といった是々非々の姿勢で対応するべきです。
有志連合に入るとイランとの関係が悪化するから日本の国益に資さない、と判断するのであれば、入らなければいい。
【村田】 ホルムズ海峡に自衛隊を出すか出さないかの二者択一的な議論をするのではなく、いくつかのバリエーションを考えなければいけませんね。
有志連合に加わるのか、海上警備行動をとるのか、あるいは安保法制(平和安全法制)で認められた措置までとるのか。法的枠組みを考慮して、慎重に検討する必要があります。
【河野】 おっしゃるように、さまざまなパターンが考えられます。P-3C哨戒機をホルムズ海峡に飛ばして情報収集を行なうのも1つでしょう。
もし日本のタンカーが危機的状況に陥ったときは、護衛艦を派遣して防護する必要があります。
私は幕僚長時代、安保法制が成立したことで米軍から非常に感謝されました。日本の防衛措置を包括的に規定した安保法制を柔軟かつ適切に運用することで、日米同盟の双務性はかなり高められます。
イランとの関係がどうであれ、自国民に危機が迫っているのであれば、自衛隊が助けに行くのは当たり前です。
【村田】 イラン政府が、革命防衛隊(イラン・イスラム革命を機に、国軍とは別に設立された精鋭部隊)を制御できていない状況もありますからね。
【河野】 イランが日本のタンカーを標的に攻撃してきた場合は、明らかに敵対行為であり、躊躇なく護衛艦の派遣を決断すべきです。
1990~91年の湾岸戦争時は国民の理解が得られず、自衛隊派遣を政治的に決められなかった。日本は130億ドルの資金支援のみを行ない、国際社会から批判を浴びました。
湾岸戦争後、国内の反対はあったものの、ペルシア湾への掃海部隊派遣が実現します。そこから自衛隊は「動く組織」に変わり始め、海外展開は時間をかけて国民の理解を得てきた。やろうと思えばできる時代になったのです。
【村田】 湾岸戦争時の日本は経済的に余裕があったため、お金で処理することができました。ところが現在はそんな状況ではない。
急速な人口減少と少子高齢化に直面するなかで、いかに効率的に自国のリソースを運用するかが重要になります。自衛隊のポテンシャルを活用できるのであれば使うべきです。
更新:11月24日 00:05