フランスでの燃料税増税への反対デモ「黄色いベスト運動」のように、いま世界中で政治への不満が高まっている。その背景として、世界の政党の大きな変容が挙げられる。
かつて左派といえば、労働者の権利を守る集団だった。だが現在の左派政党は労働者の味方であることをやめ、エリートのための政党に変容しつつあると、金融アナリストの吉松崇氏は指摘する。
吉松氏の著書『労働者の味方をやめた世界の左派政党』では、『21世紀の資本』の著者トマ・ピケティの政治分析をヒントに、21世紀の労働者を救う道を探っている。
本稿では同書より、安倍政権がなぜ選挙に強いのか、なぜ低所得者に優しい政権だと言えるのかに言及した一節を紹介する。
※本稿は吉松崇著『労働者の味方をやめた世界の左派政党』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。
自民党・安倍政権が選挙で勝ち続けているのは、景気を好転させて雇用状況を改善することに成功したからだ。しかしそれにしても、この第2次安倍政権下での左派政党の凋落は著しい。
2009年8月の衆議院総選挙で、民主党が308議席を獲得して第1党となり、民主党、社会民主党、国民新党の3党連立による鳩山由紀夫政権が誕生した。反自民の左派政権の誕生である。
この選挙時点の世論調査による政党支持率を見ると、民主党29.0%、社会民主党0.7%、国民新党0.5%、に対し、前政権与党の自民党
26.6%、公明党3.3%であった。この時点では、左派政党がおよそ30%の支持率を得ていたわけだ。
その後の推移を見てみよう。自民党・第2次安倍政権が誕生した2012年
12月の総選挙の時点の政党支持率は、民主党16.1%、社会民主党0.7%、国民新党0.1%であり、2014年12月の総選挙時点では、民主党11.7%、社会民主党0.9%、2017年10月の総選挙時点では、(民主党の後継政党である)民進党、立憲民主党、希望の党の3党合計で10.8%、社会民主党0.5%であった。
さらに、最新時点(2019年5月)の政党支持率は、(同じく、民主党の現在の後継政党である)立憲民主党、国民民主党、自由党の3党合計で5.5%、社会民主党0.6%である。
つまり、現在では、日本共産党(支持率3.2%)を含めても、左派政党への政党支持率は合計で10%にすら届かないのである。これはおそらく、左派政党のコアな支持層以外の中間層はもはや、誰もこれらの政党に「期待していない」という事態を示している。
第2次安倍政権が誕生した2012年12月以降、左派政党や左派にシンパシーを抱くマスメディアがいくら安倍政権を批判しても、有権者は聞く耳をもたず、左派政党の政党支持率は低下の一途を辿っている。
更新:12月22日 00:05