<<米トランプ大統領が「安保条約の破棄を示唆」とのニュースが突如として駆け抜け、日本国民に衝撃を与えた。北村淳氏は近著『シミュレーション日本降伏』にて、海洋進出を加速させる中国が魚釣島に侵攻した場合を想定したシミュレーションを展開しつつ、日本と中国両国の詳細な戦力比較を行っている。
そのなかで地上から敵軍の艦艇を攻撃するミサイル「地対艦ミサイル」について、中国が「地対艦ミサイル大国」で対する日本は「地対艦ミサイル先進国」だと述べている。本稿では同書より中国の現状を解説した一節を紹介する。>>
※本稿は北村淳著『シミュレーション日本降伏 中国から南西諸島を守る「島嶼防衛の鉄則」』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。
アメリカと異なり、ロシア(ソ連時代から)と中国はさまざまなタイプの地対艦ミサイルを生み出している。
これは、きわめて強力なアメリカ海軍に対抗しうるだけの強力な海軍力を建設することが難しかったソ連や中国が、自国の沿岸域までアメリカ海軍部隊に接近されることを想定していたため、地対艦ミサイルや沿岸砲で沿岸防備を固めようと考えていたためである。
かつて中国が配備を進めていた地対艦ミサイルの多くは、短・中距離ミサイルであった。
これは、人民解放軍の海軍力が弱体であった当時、中国大陸沿岸部に押し寄せる敵を防ぐための沿岸防備用軍艦を取り揃えることすら困難であったため、沿岸から地対艦ミサイルを発射して何とか敵艦の接近を阻止しようとしたためであった。
最も有名であった中国製地対艦ミサイルがシルクワームと呼ばれるものであり、改良型のバリエーションも多く、北朝鮮、イラン、イラクなどにも輸出されている"ポピュラー”な地対艦ミサイルである。
イラン・イラク戦争(イラン軍もイラク軍もともに使用した)、湾岸戦争(イラク軍がアメリカ軍艦とイギリス軍艦に向けて発射したが、イギリス軍艦によって撃墜された)、イラク戦争(イラク軍がクウェートの多国籍軍に向けて発射した)などの実戦でも使用されている。
2006年のレバノン戦争では、ヒズボラが発射したシルクワームの発展型であるC-701地対艦ミサイルがイスラエル海軍コルベットに命中し、イスラエル軍に死傷者が出ている。
更新:11月21日 00:05