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「安保条約があっても」米が日本に援軍を送らない“明確な根拠”

2019年06月26日 公開
2022年07月08日 更新

北村淳(軍事社会学者)

 

脆弱な防衛態勢を放置し続ける日本に、アメリカの援軍は来ない

このような日本国防当局の期待には、大いなる疑問符を付せざるをえない。

というのは、過去半世紀にわたって、第三国同士の領域紛争で一方当事国が他方当事国の領域を占領あるいは奪取した事態が生じた場合、アメリカが本格的軍事介入を実施したのは、サダム・フセイン政権下のイラクがクウェートに侵攻し、占領した事例だけだからである。

そのほかの軍事占領(たとえば最近の例では、ロシアによるウクライナ領の奪取)に関しては、アメリカは軍隊を送り込んではいない。

緊密な同盟国であるイギリスが、フォークランド諸島をアルゼンチンに占領されたときでさえ、アメリカは直接援軍を送らないどころか、当初の間はイギリスのサッチャー首相にアルゼンチンとの軍事対決を思いとどまるように説得を試みたほどである。

したがって、アメリカ国民の大半にとって関心の対象ではない日本の離島が中国に占領された事態が生じたとしても、アメリカ政府、アメリカ連邦議会が日本国防当局の期待に応えるかどうかには疑問符を付けざるをえないのだ。

いずれにせよ、島嶼国家日本の防衛方針は「島嶼防衛の鉄則」を完全に踏み外しており、「島嶼防衛の鉄則」によれば絶対に避けるべきである日本領土内での地上戦が想定されている。そのため、尖閣諸島のようないわゆる離島部に対する防衛方針でも「いったん取らせて、しかるのちに取り返す」という「島嶼奪還」がまかり通っている状況だ。

実際に、陸上自衛隊の編成や部隊配置は地上戦が前提とされていて、国民保護法(「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」)は、明らかに日本での地上戦が実施されることを前提とした法律なのである。

要するに現在の日本は、危険極まりない防衛ラインを設定した脆弱な防衛態勢を放置し続けている状況なのである。

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