この原則を踏まえると、日本が歴史的に地政学から遠ざかっていた理由もわかるのではないでしょうか。
6~7世紀に隋・唐から軍事的圧迫を受けたヤマト政権は、「敵に学べ」と律令国家となり、その後、国内での内戦は何度かあったものの、外国勢力との戦いは11世紀初頭の「刀伊の入寇」、13世紀後半の元による日本遠征「文永・弘安の役/元寇」や、16世紀末の豊臣政権による朝鮮出兵「文禄・慶長の役、朝鮮側では壬申・丁酉の倭乱」など、ごく限られてきました。
幕末の開国以降、日本は欧米列強との熾烈な勢力争いに挑み、地政学も積極的に学びましたが、残念ながら米国との戦争に大敗しました。敗戦後はその反動からか、地政学をタブー視する風潮が広がりました。
戦後日本の歴史学者のなかには、アイデアリズムを信奉し、日本が敗北した理由は「理想が間違っていたから」と決めつけたがる人もいます。これは裏を返せば、「正しい理想を持っていれば戦争には負けない/戦争は起きない」ということになります。
ただ、その考え自体が単なるアイデアにすぎないことは、最近の中国や朝鮮半島の行動が如実に物語っています。
同時に、現在の日本が仮に中国や朝鮮半島よりいくら「倫理的に正しい行動」をとっても、生存競争に勝てる保証はないことを示しています。かつての敗戦の理由を探り、今後どのような戦略をとるべきかは、リアリズムに基づいて追求されなければなりません。地政学はその助けになります。
更新:11月22日 00:05