2019年06月27日 公開
2020年07月21日 更新
もちろん、日本企業もシリコンバレーで何が流行っているか、絶えず注目しているでしょうし、調査にやってくる社員も多い。ところが、日本人は技術優先の発想が強いためか、ピント外れな行動を取りがちです。
シリコンバレーでは、配車サービスのウーバーが流行れば、似たようなサービスを手掛けるベンチャーがそれこそたくさん生まれます。
日本企業から派遣された調査員は、こうした数多のベンチャーの技術や製品の特徴について、この機能が「ある」「ない」といった表にまとめ、◯×△をつけて評価していく作業をします。
そしてその機能差を表した表を日本に持ち帰り、「そのベンチャーがやってない機能を加えよう」と開発を始めるのです。
しかし、どのベンチャーが成功するかは、創業者がグーグル出身であるとか、過去に起業して実績を残しているとか、技術以外の要素で決まる場合が多い。製品の性能や精度よりも、経営者のほうが評価されている面があります。
投資家のジョージ・ソロス氏は「よい企業の株価が上がるのではない。株価が上がった企業がよい企業になる」といっています。株を買ってもらうことでお金を集めることができるから、結果的に規模が大きくなって、よい企業になるというわけです。
たしかに、それまで世になかった機能を開発したスティーブ・ジョブズ氏とビル・ゲイツ氏の戦いは取り上げられることも多く、インパクトも強い。ただ、これはあくまで「過去のシリコンバレー」の話であり、いまは違う見方をしたほうがよいと思います。
要するに、どんなに優れた技術や製品を開発しても、世界の時流に乗れなければ売れない、という厳然たる事実があるのです。
繰り返し強調しますが、そうした世界の時流はシリコンバレーのお金持ちによってつくられています。だからこそ、シリコンバレーで成功しないと世界では勝てません。
逆にいえば、シリコンバレーで成功すれば、自ずと世界で勝てるのです。これは個人についても、企業についても同じことがいえるでしょう。
日本国民が一生懸命働いて稼いだお金を銀行に預けると、日本の銀行はアメリカ国債を買います。利子としてほんの一部が返されるだけで、そのお金で潤うのはアメリカです。
いってみれば、日本人が夜遅くまで残業して働いているのは、アメリカ人を豊かにするためのようなものです。為替もアメリカ優位になっています。こんな悔しいことはありません。
日本は、シリコンバレーのような場所を国内につくろうという発想はもう捨てて、むしろアメリカのシリコンバレーをどう利用するか、といった考え方にシフトすべきです。これは日本人が次の時代を生き抜くために必要なことであると思います。
更新:11月23日 00:05