2019年04月25日 公開
2022年06月23日 更新
サイバー・インテリジェンスとは、サイバー空間でデータを収集することである。そしてサイバー分野の黎明期である1990年代から世界のサイバー空間を一貫して制してきたのはアメリカだ。
アメリカはサイバー空間のデータを支配し、特定の同盟国と共有してきた。その同盟国とは、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドという英語圏の国々4カ国であり、これにアメリカを含めた5カ国は「5Eyes(ファイブアイズ)」と総称される。
ファイブアイズの源流は第2次世界大戦時にまで遡ることになる。最初は米英が日独の軍事用暗号を解読するために密かに同盟を結成し、戦後はソ連の暗号を解読し、情報を収集するため、この2カ国に残りの3カ国が合流したことで始まった。
その対象はソ連や東欧諸国であったのが、冷戦後には日本を含む世界中の国々を対象としている。
2001年にテロとの戦いが本格化すると、今度はテロ対策を理由に、サイバー空間から莫大なデータを収集し始めたのである。
この現状に懸念を抱いたのが、アメリカの情報機関員であったエドワード・スノーデン氏であり、同氏は2013年5月に職場から持ち出した膨大なデータを、イギリスの『ガーディアン』紙に提供して、それが世界的なスキャンダルに発展した。
スノーデン氏の暴露が示唆しているのは、ファイブアイズ諸国がサイバー空間から莫大なデータを無差別に収集していたことであり、ときにはテロとは関係のない一般人の情報まで吸い上げていたという事も判明して欧米では大問題となった。
そのためアメリカでは2015年に米国自由法が、2016年にはイギリスで調査権限規制法が制定され、サイバー空間における無差別のデータ収集に一定の規制がかけられることになった。
いまやサイバー空間におけるデータは政治における権力や経済における貨幣、産業における石油と同様に重要なものであり、データを制する者がネットを制し、ネットを制する者が政治や経済を制するといっても過言ではない。
昨年にはフェイスブックユーザーの8700万人分もの膨大なデータが2016年の米大統領選挙に使用されたと話題になり、また愛知県では個人のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)情報を基に窃盗団が暗躍したことが話題となった。
個々のデータの価値はたかが知れているが、それを集めて分析すれば、ときに無限の価値を生み出すことになる。
つまりこの分野ではいかに大量の情報を効率よく集められるかがカギになってくるのであり、そのためにはサイバー空間でデータを収集するプラットフォームをつくり出したものが勝利者となる。
GAFA(Google,Apple,Facebook,Amazon)といったアメリカの巨大IT企業群はまさにそれを体現している。
これまでは法規制の曖昧さによって、こういった企業が集めたデータが政府の情報機関に提供されたり、機器にバックドア(正規の手続きを踏まずに内部に入ることが可能な侵入口)と呼ばれる抜け道をつくっておき、そこからこっそりとデータを収集したりすることも可能であった。
そして中国もファイブアイズ諸国に倣い、中国製の通信機器のバックドアを利用して、ネット情報を大量に収集し始めたものと想像される。
前述のディーン・チェンの著作によると、中国でサイバー情報を担当しているのは、人民解放軍総参謀部第三部であり、同局はアメリカ担当、日本担当、台湾担当などの組織に分かれてそれぞれの国の情報を収集しているという。
更新:11月22日 00:05