2019年04月01日 公開
2024年12月16日 更新
<<地域銀行(地銀)は、地域における規模は大きく、プレゼンスは絶大である。しかし、その規模をひたすら拡大させていくことに邁進して、社会から求められている地域での役割を果たし切れているのかという疑問が各地で呈されている。
そして、2019年4月1日、2年越しの紆余曲折を経て、福岡県のふくおかフィナンシャルグループ(FFG)と長崎県の十八銀行による経営統合に至った。
「ミニ都銀化」「ミニ・メガバンク化」の道を走り続けているようにも見える地銀の今後を見通すうえで、両金融機関の経営統合が示すものとはーー『地銀衰退の真実 未来に選ばれし金融機関』(PHPビジネス新書)』の発刊を控える金融ジャーナリスト・浪川攻氏がその内実を綴った。>>
※本書は2019年4月下旬に発刊予定の『地銀衰退の真実 未来に選ばれし金融機関』(PHPビジネス新書)の内容を編集した先行記事です
銀行によって地域との関係性には濃淡がある。メガバンクが淡泊であるとすれば、地域銀行はその歴史からして濃厚である。
ところが、ミニ・メガバンク(都銀)化して、地域銀行といえども地域から拡散する動きを強めれば、地域に対する役割意識や配慮の度合いは浅くならざるをえないだろう。
地域からの拡散のメカニズムは、規模の追求で収益を積み上げようという発想の強さから生じている面がある。
たとえば、首都圏に進出しての大企業取引への参戦であり、隣県に出店し合う県境越えである。いずれも、その闘いの武器になっているのは低金利攻勢であって、新たな進出地域で密着型の業務を展開するというムードは著しく乏しい。
結局、地域銀行は互いに低金利攻勢をかけ合って、本来であれば確保できたであろう利ざやを得られない消耗戦を繰り広げているのではないか。本来的には得られた利ざやがない分だけ収益力は落ちて、人件費などのコストを加味すればコスト倒れに陥っているとも言えるほどの無益な戦いぶりである。
米国では大小多数の銀行がひしめき合っているにもかかわらず、大多数の銀行がそれなりの利益を稼ぎ出している。
これにはかつての厳しい州際規制の名残という要素もないわけではないが、自然と銀行ごとに地域、顧客層などですみ分けがなされているからでもある。つまり、銀行同士による闘いはあっても、わが国のような消耗戦にまでは発展していないということになる。
もちろん、米国では弱肉強食の買収合戦が繰り広げられていて、個々のビジネスが消耗戦にまで泥沼化する以前に、資本市場で勝ち負けの決着がついてしまっているという側面もある。
この点は、わが国では、これまで銀行業界にはなかったものである。
存在しているのは、経営統合の発表の際に、当事者の銀行トップたちが語る「なんとなく、阿吽の呼吸で決まった」という“引き分け試合”のようなケースばかりだ。
消耗戦にエネルギーを費やすくらいであれば、まだ、果敢な買収にエネルギーを投入したほうがいいかもしれない。
それは、多くの経営統合が資本市場の尺度からすると、遅きに失したタイミングで行なわれていることや、いつまで経っても、持ち株会社の下に母体銀行が子会社として別々にぶら下がり続けるという、実質的には個別経営の延長線のような状況が生まれていることも無縁ではないだろう。
だが、そうではない経営統合であっても、地域銀行の場合には、必ずしも、そのまま理想的な結果が得られるとは限らない。
更新:12月22日 00:05