2018年12月18日 公開
2023年01月12日 更新
今後ユーチューバーで食っていくことが難しくなっていくと、僕が考える理由がもう1つあります。
それは、配信が「ナマモノ」でなくてもよくなるから。
僕たちは、動画配信は生きた人間がやるのが当たり前だと思っているけど、そういう常識が崩れつつあります。
バーチャルユーチューバーは、その先駆けでしょう。配信者の動きや表情に、CGで作られたキャラクターをかぶせて動かすのがバーチャルユーチューバー。美少女の外見をしたバーチャルユーチューバーであっても、「中の人」はおっさんだったりします。
一昔前だったら、おっさんが美少女を演じているというのがバレたら、ファンは引いたと思うんです。だけど、ライブ配信中の事故で、バーチャルユーチューバーの「中の人」が画面に出てしまったりしても、みんなそれを面白がるようになっています。現実を「盛る」ことにみんな慣れ始めているのです。
現在のバーチャルユーチューバーは、着ぐるみみたいなものです。仮想の「皮」をかぶった人が演じているだけですが、このあたりの技術はものすごいスピードで進歩しています。
今でもCGキャラクターとのやり取りを楽しむVRゲームはありますが、人工知能がユーチューバーになる日はそう遠くないでしょう。
人間がユーチューバーである限り、配信の頻度にも限界があります。どんなに熱心であっても、人間が作れる動画なんてせいぜい1日4本くらいが限界でしょう。でも、人工知能なら疲れることもありませんから、1日24時間365日、配信し続けられます。
その結果、どういうことが起こるでしょうか?
「AIユーチューバーの住んでいる世界」そのものを提供する娯楽が誕生する、と僕は睨んでいます。いや、もうユーチューバーではないですね。配信プラットフォームとしてユーチューブを使う必要もありませんから。
中世ヨーロッパ風のファンタジー世界だったり、SFチックな未来都市だったり、そんな仮想世界がネット上に構築されている。現実と同じくらいのディテールで描かれた世界の中には、イケメンや美少女キャラ、モンスターが生きています。
仮想世界のAIキャラは毎日、ひょっとしたら1時間に1回、30分に1回といった頻度で自分の番組を配信するんです。
僕らは、仮想世界にログインして、仮想キャラの配信や生活している様子を見ることが生きがいになる。そんな美しくてドキドキする世界に比べたら、現実なんて「出来の悪いサブ世界」の1つにすぎません。
整理すると、これから数年で日本人ユーチューバーの主流はアイドルや芸人になる。10年以内には言語の壁が崩れて、グローバルユーチューバーに日本人ユーチューバーは淘汰される。そして10年後、人間ユーチューバーは、AIユーチューバーに淘汰される─―。
SF映画『ターミネーター』では、サイバーダイン社の作ったアンドロイドが人類を武力で制圧しますが、そういう未来は起こらないのではないでしょうか。
人類はたぶん人工知能に支配されるでしょう。だけど、それは武力によってではありません。
彼らの武器は、「面白さ」だったり、「可愛いらしさ」だったり、「毎日100回更新するマメさ」だったりします。人類には不可能な安定した魅力や進撃速度で、僕らの日常生活における興味関心を占有してしまうんです。
こうなると、「人工知能が支配する」という言い方はもはや適切ではないかもしれません。「人工知能が人間のフォロワーを独占する」ということになるんじゃないでしょうか。
更新:11月22日 00:05