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なぜいま、天皇だけが「エンペラー」なのか

2018年10月18日 公開
2022年12月15日 更新

倉山満(憲政史研究家)

皇帝はインフレから「ハイパーデフレ」へ

さて、「皇帝のインフレ」はその後どうなったでしょうか。

「皇帝」と呼ばれたなかで、21世紀の現在でもエンペラーとして残っているのは日本の天皇だけになりました。インフレが収まったどころか、エンペラーたちは軒並み姿を消したのです。むしろ「皇帝のハイパーデフレ」です。

現在のイギリスの君主エリザベス2世もインド皇帝は兼ねておらず、クイーンに戻っています。イギリスの君主が実質的に皇帝でなくなったのは1931年です。

1931年のウエストミンスター憲章で植民地だったカナダやオーストラリアが独立国になり、イギリスの君主は帝国の皇帝ではなく、英連邦の盟主であるという関係に変わっていったからです。

イギリスの君主が正式に皇帝ではなくなったのが、インド皇帝を正式に辞めた1947年、ジョージ6世のときです。ジョージ6世はエリザベス2世の父で、映画『英国王のスピーチ』の主人公として描かれた王です。

天皇を除いてエンペラーたちはいなくなりました。では、皇帝たちの国はどうなったでしょうか。

日本とイギリス以外はすべてなくなりました。そして、君主を戴かない共和国というまったく違う国になってしまったのです。それも第1次世界大戦が終わってすぐといえる時期までにどんどん消えていきました。

何が、君主国として残った日本とイギリスと、それ以外の違いを生んだのか。

生き残りの鍵こそ立憲君主制でした。

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