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竹中平蔵×ムーギー・キム 財務官僚の不祥事連発は「安上がりなエリート促成栽培方式」が原因

2018年04月18日 公開
2022年10月27日 更新

竹中平蔵(東洋大学教授),ムーギー・キム(投資家)

18日夕、週刊新潮が報じた「セクハラ疑惑」を受け、麻生太郎財務大臣より福田淳一事務次官の辞職が発表された。

このところ、不祥事が連発している財務省。書類隠ぺいに書き換え、果てはセクハラ疑惑による次官辞職まで――。

世間を大いに騒がせ、「官僚体質」が大問題となった大蔵省接待汚職事件(通称ノーパンしゃぶしゃぶ事件)から早20年が経過。

その間さまざまな「省庁改革」が断行されたはずだが、そこに来て今回の一連の不祥事。

官僚制度の何がこのような事態を招いているのか?

竹中平蔵×ムーギー・キムの新刊『最強の生産性革命 時代遅れのルールに縛られない38の教訓』から、昨今話題の“変わらない官僚体質”の本質を抜粋。

元大臣として官僚を知り尽くした竹中氏と、「グローバル・エリート」ことムーギー・キム氏が徹底解説する。

(冒頭 ムーギー・キム)

寝ても覚めても財務官僚の不祥事問題で話題が持ちきりの最近だが、はたして官僚はなぜ、国民から程遠く離れた不祥事を繰り返してしまうのか?

私には立派な尊敬する官僚の友人も複数いるので全部がそうだということはできないが、それでも「官僚的」「官僚体質」という単語の由来になるくらいだから、官僚組織には特定の行動を運命づけられる制度的問題点があるのである。

そこで以下では、「不祥事隠ぺいでバレる!!官僚組織の本質的問題点」を『最強の生産革命 時代遅れのルールにしばられない38の教訓』から抜粋し、官僚組織との戦いと改革に取り込んでこられた竹中平蔵氏に、超わかりやすく、解説していただこう。

 

時代遅れの官僚終身雇用制度の弊害と、「安上がりなエリート促成栽培方式」の欠点

 

竹中 政治がなかなか変われない最大の理由は、政策が官僚終身雇用制度の上で作られているからだと思います。

キム どういうことですか。

竹中 官僚は政権が代わろうがどうしようが、クビになりません。公務員なので、不利益処分を受けるときはいろいろ条件がつく。公務員には団結権がないので、ストをしてはいけないことになっている。その分、しっかり守られているんですよ。

それに、官僚は終身雇用制で、東大を何番で卒業して公務員試験に何番で受かったか、そしてどういうキャリアを積んだかがずっとついて回る。そういう人たちが、政府の政策をずっと継続させているわけです。

だから業界団体等としては、ある時点でお上の言うことを聞いていれば、次も安心なんです。逆に逆らったりすると、その時点ではうまくいったとしても次で仕返しを食らう。「江戸の仇を長崎で討つ」という言葉がありますが、それを官僚たちはやるんです。

だからお上はすごい力を持っている。その力の最大の要因が、終身雇用・年功序列なんですよ。

キム 官僚には終身雇用と年功序列が保障されているため、そういう人に一度でも逆らうと、ずっと恨まれてどこかで復讐されると。だから国民や業界団体は省庁に対して恐れを持っていて逆らえないということですか?

竹中 そうです。経団連をはじめとする業界団体は、みんなそれをわかっています。

だから経団連の事務局というのは、同じく年功序列で霞が関理論に追従する官僚的組織になっているわけです。いわば「民僚」です。

誰かがお上に逆らって改革をやろうとしても、だいたい裏切るのは経団連なんですよ。

キム つまり財界は官僚に従い、官僚は議員に「先生、先生」と擦り寄り、議員は財界からお金を恵んでもらう。そういうトライアングルになっているわけですね。

竹中 そのとおり。その鉄のトライアングルは強力で、お互いにもたれ合う仕組みになっている。官僚は国会議員の先生に自分たちが作った法案を通してもらわなきゃいけない。議員先生は財界からお金をもらわなきゃいけない。財界は官僚に支配される立場にあるから、いろいろお伺いを立てなきゃいけない。そういうジャンケンのような形になっているんです。

このトライアングルはすごいですよね。アメリカだとコインの裏と表だから、勝つか負けるかなんだけど、日本はジャンケンだから明確な強者がいないんですよ。

ついでに言うとね、これまでの官僚制度というのは、要するにエリートの促成栽培制度なんですよ。国家公務員の上級試験というのがありますよね。しかし、その試験を通っただけで高級官僚になれるというのは、どう考えてもおかしいでしょ。そんな大した試験じゃないんだから。

キム そうですよね。こんな試験で「真の公僕」に必要な能力を測れるんですかっていう感じです。

竹中 近代国家を作るとき、とにかく誰かをエリート官僚にしなきゃいけなかった。だから促成栽培制度を作ったんですよ。それが今日でも残っている。

大学入試というのも、促成栽培の一環のようなものですよね。あんなもので人間の能力を測れるわけがない。結局、ものすごく安上がりな制度なんです。

著者紹介

竹中平蔵(たけなか・へいぞう)

東洋大学教授・慶應義塾大学名誉教授

1951年、和歌山県生まれ。1973年、一橋大学経済学部卒。2001年、経済財政担当大臣に就任。以後、金融担当大臣、総務大臣などを歴任する。2013年、安倍政権で産業競争力会議有識者委員に就任。著書に、『竹中流「世界人」のススメ』(PHPビジネス新書)ほか多数。

ムーギー・キム(ムーギー・キム)

投資家、『最強の働き方』『一流の育て方』著者

1977年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。INSEADにてMBA(経営学修士)取得。大学卒業後、外資系金融機関の投資銀行部門にて、日本企業の上場および資金調達に従事。その後、大手グローバル・コンサルティングファームにて企業の戦略立案を担当し、多くの国際的なコンサルティングプロジェクトに参画。2005年より世界最大級の外資系資産運用会社にてバイサイドアナリストとして株式調査業務を担当したのち、香港に移住してプライベート・エクイティ・ファンドへの投資業務に転身。ベストセラー作家としても知られ、近著に、『最強の健康法―世界レベルの名医の本音を全部まとめてみた』(SBクリエイティブ)と、『最強のディズニーレッスン―世界中のグローバルエリートがディズニーで学んだ、50箇条の魔法の仕事術』(三五館シンシャ)がある。

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