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復興増税の期間を再検討すべし

2011年09月21日 公開
2023年09月15日 更新

宮下量久(政策シンクタンクPHP総研研究員)

 9月16日、政府税制調査会(以下、政府税調)は東日本大震災の復興財源などに充てる臨時増税案をまとめました。復興増税については政府与党内でも賛否両論があります。被災地の早期復興を図るために、増税は必要不可欠なのでしょうか。

 7月末にまとめられた「復興の基本方針」によると、平成27年度末までの5年間におよぶ集中復興期間の事業規模は約19兆円、さらに、集中復興期間を含む10年間の事業費は約23兆円と見込まれています。第1次補正予算と第2次補正予算は合わせて約6兆円だったので、今後必要となる復興事業費は残り17兆円程度になります。

 これらの財源は、復興債の発行や政府資産の売却による税外収入などで確保される予定です。復興債発行は、政府の長期債務残高を増加させ、国家財政の健全性を損なう恐れもあります。平成22年度末では、国・地方の長期債務残高は約862兆円でした。政府は増税によって復興債償還の財源確保を確実にし、債務の累積を軽減させようとしています。

 そこで、政府税調は増税項目について3つの案を検討しました。第1案では所得控除等の見直しと法人税、所得税、住民税を増税対象とし、第2案では第1案の増税項目にたばこ税なども加えられています。第3案では所得控除等の見直しと消費税の3%引き上げが記されています。これら3案のいずれも総額11.2兆円程度の増収を見込んでいます。さらに、増税期間は「復興の基本方針」で示された復興期間に合わせて、5年と10年という2パターンが示されています。

 これらの検討案を受けて、野田総理は増税項目から消費税を外し、増税期間を10年で検討するよう政府税調に指示しました。総理の指示には、将来的な社会保障財源確保のために消費増税を温存し、単年度の負担軽減のため長期に増税する意図があると考えられます。

 しかし、増税期間を10年とする根拠について再検討の余地があります。復興事業の大部分は、道路・水道・電気・ガスや住宅などの生活基盤の再構築です。これらの耐用年数は10年を越えるため、復興債の償還期限をより長期にすることも可能です。政府税調は復興増税の基本方針で「復旧・復興のための財源については、次の世代に負担を先送りすることなく、今を生きる世代全体で連帯し負担を分かち合う」と示していますが、その期間として10年が必ずしも妥当とは言い切れません。償還期間が長期になれば、単年度の財源は少額になり、経済成長による税収増加や歳出削減でも賄えるかもしれません。この場合には、増税の必要性が問われてきます。

 むしろ、復興事業を除く一般歳出の負担こそ次世代に先送りすべきではありません。平成23年度の税収不足を補う特例国債発行額は一般会計の歳入のうち約40%にあたります。つまり、復興以外の公共支出のうち約4割が将来世代から借りた財源で賄われているのです。政府は、昨年定められた財政健全化目標の「2020年度までに国・地方の基礎的財政収支の黒字化」に取り組まなくてはなりません。

 包括的な財政運営に配慮しつつ、復興財源に関する議論が着実に進展することを期待したいと思います。

(2011年9月20日掲載。*無断転載禁止)

 

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