2017年03月24日 公開
2017年04月21日 更新
――たしかに、年金が約束どおり給付されるかどうか不安だからと、若者が自己防衛のために貯蓄に励むのはわかる気がします。ただ、高齢者は現在年金を支給されており、いまさら将来に備える必要もありません。彼らがお金を使わないのはなぜですか。
大前 いまの高齢者は、年金、貯金、生命保険という三重の投資で老後に備えている。それで年金が支給されるようになっても、その3割を貯金に回して死ぬまでお金を増やし続けるのだ。なんでそんなことをするのか尋ねると、彼らは口をそろえてこういう。「いざというときのためです」。だが、働き盛りのサラリーマンならいざ知らず、いざというときというのは、いったいいつなのか。想定外の長生きや大病だというが、長生きして貯金が尽きたところで年金はもらえる。それに、歳を取って大病をしたら、そのときは寿命だと思って腹を括り、それまでは人生を楽しむことに専念しよう、とすれば景気は爆発的に良くなる。
そもそも、日本人の貯金額が最大なのは死ぬときで、その平均額はなんと3500万円。葬式代くらいは自分で出したいというのはわかるが、イオンでいちばんデラックスな葬式が約75万円というのを考えると、この額は途方もなく大きい。
結局、日本人は、今際の際までお金を握っていないと不安でたまらない。ただそれだけなのだ。ということは、国民の心理からこの不安を払拭すれば、みんなもっとお金を使うようになるのである。とくに、1700兆円の大半をもっている高齢者のマインドが変われば、お金は確実に出てくる。それが個人金融資産の1%なら17兆円。これだけでも消費税4%以上のインパクトがあるのだ。この国は勤労者の賃上げではなく、高齢者が人生を謳歌するために貯蓄を利用することによって経済が飛躍的に伸びるのだ。こんなことは経済学のどこを見ても書いてないが、それが日本という国の特徴なのだ。
金利は下がれば下がるほどこの人たちには打撃が大きい。市場にカネをばらまいても、関係ない。この人たちはすでに自分で金をもっているのだから。こうした自国の研究をしないで外国の経済学者を呼ぶ、などは愚の骨頂、ということにそろそろ気付くべきなのだ。
安倍首相も本気で日本の景気を回復させ、GDP600兆円を達成させる気があるなら、高齢者が安心して自分のためにお金を使えるような政策を中心に据えるべきなのである。
更新:11月22日 00:05