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三度目の総理も視野に? 安倍元首相が成し遂げたかったこと

2023年07月31日 公開

青山和弘(政治ジャーナリスト)

岸田政権 憲法改正

悲願である"憲法改正"に向けて、尽力した安倍晋三元首相。2022年7月、安倍元首相が凶弾に命を絶たれて以降、政権は羅針盤を失ったかのごとく動揺した。岸田政権の先の見通しとは?安倍元首相に徹底的に取材を重ねた政治ジャーナリストの青山和弘氏が語る。

※本稿は、『Voice』(2023年8月号)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

自民党保守勢力の拡大も画策

安倍晋三はかねてからの悲願である憲法改正のために、日本維新の会が野党第一党になるという絵図を描いていた。

そんな安倍の思いは自民党内にも向いていた。憲法改正も含む「戦後レジームからの脱却」には、自民党内の保守勢力も拡大する必要があったのだ。

安倍は2015年、拙著『安倍さんとホンネで話した700時間』(PHP研究所)に向けたインタビューの中でこう述懐していた。

「私が当選した頃は、保守と言うのはまったく悪いイメージなんです。北朝鮮拉致問題とか教科書問題などに携わっていると、"変わった人"のカテゴリーに入れられるわけですよ。

ちょっと極端な人々みたいなね。アメリカの占領政策のマインドコントロールは何世代にも渡るのかって感じがするね。(自民党も)だいぶ変わってきたけど、大変だった」

1993年、安倍初当選のときは細川護熙政権ができて、自民党は野党だった。約1年後、自民・社民・さきがけの三党連立政権となって政権に復帰したが、安倍は自民党が社民・さきがけに迎合して「とても堕落している」と感じたという。

それから野中広務元幹事長や河野洋平元総裁ら党内のリベラル派と闘争。ポストが上がってくると、稲田朋美、杉田水脈、青山繁晴、山田宏といった保守系の人物を次々と自民党国会議員にリクルートしていった。

現在最大派閥となった安倍派を中心とする自民党保守勢力の拡大は、安倍政権の長期化に加えて、野中ら戦中派議員の引退、北朝鮮の核ミサイル開発や中国の台頭など安全保障環境の変化のなかで加速していった。

 

左傾化する野党第一党

こうした動きの一方で、野党第一党は逆方向に向かっていく。民主党から民進党、そして立憲民主党と変遷していくにしたがって、左傾化を強めていった。

2009年に民主党が政権交代を果たした当時は、鳩山由紀夫元総理、小沢一郎元幹事長という自民党出身議員がトップを務め、前原誠司元外相、細野豪志元環境相などの保守系議員も多く抱えた、旧社会党系までウイングの広い政党だった。

しかし、野党に転落して以降、保守系議員が徐々に離れていった。そして大きな転機となったのが立憲民主党の結党だ。

2017年、小池百合子東京都知事が立ち上げた「希望の党」は、民進党議員の合流にあたって安保関連法の事実上の容認などを条件に「排除」を振りかざした。

立憲はそれによって希望の党への合流を阻まれた、もしくは避けた議員たちが結成した政党だ。つまり民進党内のよりリベラルな集団が立ち上げたのが立憲であり、そのDNAには、安全保障政策での対立軸が埋め込まれているのだ。

そして総選挙の結果、僅差ながら立憲が希望の党を上回る野党第一党となり、野党勢力の軸に座った意味は大きい。

2021年の衆院選での敗北をきっかけに、立憲の代表は創設者の枝野幸男から、希望の党、そして国民民主党と渡り歩いた泉健太にバトンタッチした。

立憲の失速に危機感を抱いた泉は、現実的な安全保障政策や日本共産党との共闘の見直しを掲げたが、強いリーダーシップは示せず、かえって立憲がどういう政党なのか見えにくくなってしまっている。

こうした状況により、保守かリベラルかというよりもいまの政治に不満をもち、現実的な変革を求める有権者の期待が、維新に集まりやすくなっている。このいわゆる"改革勢力"は、その昔は小泉純一郎総理が、その後は民主党が担ったポジションだ。

さらに存在感が薄い泉に比べて、維新には吉村洋文大阪府知事というリーダーが見えるのも強みだ。吉村はこれまで自らが国政に進出することには否定的だったが、吉村に近い維新関係者はこう明らかにする。

「(今年4月の)統一地方選挙の躍進を受けて吉村さんの意識にも変化が見えてきた。万博が終わるまでは府知事を辞めるわけにはいかないが、その後維新が政権交代の勝負に出るときは総理候補として出てくる可能性も十分ある」

とはいえ維新が自民党と伍する二大政党の一角に成長するには、まだいくつものハードルがある。維新の現有議席数はいまだ衆議院41、参議院21に過ぎない。

大量の候補者発掘を急げば、「粗製乱造」の懸念が増大する。維新幹部にとって所属議員の不祥事対応はいまも日常茶飯事だ。維新幹部はこう嘆く。

「リスクコントロールがうまくできなければ、維新への期待感はしぼんでしまう。とにかく神経を使います」

この問題をスキップするにはいまある政党との合流、いわゆる政界再編によって勢力を拡大するという方策もある。しかしこれまで維新は、大阪の地域政党からの脱皮をめざす過程で他党との合従連衡を繰り返し、ことごとく失敗してきた。

2012年の石原慎太郎元都知事率いる「太陽の党」との合流、2014年の江田憲司らの「結いの党」との合併は、結局は党分裂につながって水泡に帰した。

その結果として2015年に大阪組が純化する形でできた「おおさか維新の会」が、いまの「日本維新の会」の原型となっている。維新幹部は語る。

「既存政党と離合集散するのは維新の"負の歴史"ですよ。これからは一気に勢力を拡大しようとはしないで、まずは野党第一党となり、そのうえで政権交代をめざします」

しかし関西や大都市圏を除けば、まだまだ手足となる自治体議員もおらず、地方組織もない。維新が自力で政権に手が届く勢力にまで成長するには、リスクを背負いながら議員を増やす、長い道のりが必要となるだろう。

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