――藤井竜王を中心とした棋士たちの活躍もあり、将棋界全体が盛り上がっています。そうした世間の将棋熱の高まりは感じていますか。
【谷川】そうですね。多くの方が将棋に関心をもってくださるのはとても喜ばしいことです。最近は対局の形勢判断をAIが可視化してくれるので、ファンの方々にとっても観戦しやくなったのではないでしょうか。
かつては形勢を把握するには棋士の解説を聞くしかなかったのですが、いまは「60対40で先手有利」のように数字で示され、観る側にわかりやすくなりました。その分、対局者も解説者も観てくださる方に試されていますから、大変な時代ではあるのですが。
――谷川十七世名人はこれまで数々のタイトルを獲得し、永世名人を現役時代に襲位されました(現役中の永世名人襲位は大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人に続いて三人目)。還暦も迎えたいま、今後の目標をどう見据えていますか。
【谷川】具体的なタイトルなどについて申し上げるような立場ではありませんが、これからも若手棋士との本気の勝負を楽しみたいですね。この将棋の変革期に現役棋士でいられることは非常に有難いことです。現役だからこそ勝負に必死になり、将棋の研究に一所懸命に打ち込めるわけですから。
将棋の魅力の1つは、年齢に関係なく対等に勝負ができる点です。30歳、40歳離れた相手とも、盤上で「対話」を交わせます。一般社会で、40歳離れた相手と近くで何時間も真剣に向き合う機会はあまりないはずです。
これからも若手棋士と対局できることに感謝しながら、真っ向勝負をしたいと思っています。
更新:11月24日 00:05