2012年05月15日 公開
2023年09月15日 更新
社会保障と税の一体改革関連法案が衆議院で審議入りした。消費増税反対を唱える与党内からの声もあり、本法案審議の難航が予想される。
野田総理は法案成立に向けて「政治生命をかける」と発言し、国会審議の行方次第では衆議院解散・総選挙も辞さない構えを見せている。総選挙は本当に行われるのだろうか。景気動向からそのタイミングを考えてみたい。
前回の総選挙から2年9ヵ月。この間、リーマンショックに端を発した経済危機や欧州諸国の財政問題は日本経済の急速な悪化を招いた。昨年には、東日本大震災が発生し、今夏の電力不足が懸念されている。
ただ、景気悪化に歯止めがかかり、経済は回復しつつある。わが国の景気動向を過去の経済データから分析して、景気の山と谷の時期を示す内閣府の景気動向指数研究会がある。
昨年10月の研究会では、2009年3月に景気は底を打ったことが発表された。実際、今年3月の景気動向指数は2ヵ月連続で上昇しており、景気回復の傾向が見られる。
このような景気動向と選挙時期に関する興味深い仮説がある。それは、選挙時期には好景気となり、選挙後には不景気になるという「政治的景気循環仮説」である。
政府与党は次の選挙で再選率を上げるため、財政支出を拡大して景気回復を図ろうとする。これが景気浮揚に貢献すれば、選挙の実施時期には好景気になる。ただ、財政的制約があるため、政府は支出拡大を長期的に維持できず、景気の下支えは長く続かない。
その結果、選挙後には不況になってしまう。この仮説を支持する実証研究は多数あり、例えば、アメリカの景気は大統領選挙の時期にあわせて循環する傾向にあると指摘されている。
わが国にも、政治的景気循環仮説は当てはまる。1951年からの衆議院選挙は20回におよび、このうち16回は景気拡張期に行われている。
一方で、参議院選挙もこれまで20回実施されたが、そのうち好況期に行われたのは10回である。総選挙は米国大統領選や参院選と異なり、総理が選挙時期を決められる。
好況期に行われた16回の総選挙のうち14回が、任期満了前の解散によって行われた。歴代総理の多くが総選挙を見据えて景気対策を行う一方で、景気状況に応じて選挙を実施してきた可能性が高いという研究もある。
現在の景気は回復傾向にあり、経済的側面から見れば衆議院解散の条件は整いつつある。特に、野田総理は消費増税の実現を目指して総選挙を行おうとしている。
増税は国民に負担を強いるため、与党の得票増加につながる見込みは小さい。ダメージを最小化するには、景気回復期に入った今こそ総選挙を実施する好機といえる。
選挙とは各政策や候補者について国民から合意を得るものである。消費増税を含む社会保障改革の是非について、最後の選択を国民に委ねようとする野田総理の政治姿勢は正攻法といえるのではないか。
自民党も独自の社会保障改革案を準備しており、国会における議論は本格化しつつある。国民に多様な選択肢を提示しうる論戦を各党に期待したい。
更新:11月24日 00:05