2022年04月09日 公開
アメリカの核兵器の小型化は急速に進んでおり、地上戦闘では放射能による汚染地域を限定しながら最前線の戦闘員が使える程度まで小さくなった。そうした小型の核弾頭は、通常のダイナマイトに換算すれば5キロトン程度、戦略爆撃機から投下される爆弾とあまり変わらない大きさになった。
この小型化された核弾頭をタイムリーに使い、相手側を心理的に圧迫すれば、通常兵器体系のもとでは弱者であるロシアのプーチンがアメリカに勝てる戦略ということになったのであった。
「なったのであった」と述べたが、プーチンの考え方、戦略が実地に試されたわけではない。プーチンが考えている小型化というのは、アメリカが射程10キロを超えて攻撃できる大砲の弾薬に詰められたものと同じ程度に小型化できるという情報から生み出されたものであるが、現実にアメリカ側はこうした極端な核弾頭の小型化に成功している。
アメリカのロスアラモスの核兵器開発センターでつくられたW‒67型ミサイル、その2型は、核弾頭の威力が5キロトン程度で、通常の第四世代戦闘爆撃機であるF‒16Aや、さらにはわずかながらの改良を施せばF‒15Cなどが搭載し、爆撃することが可能である。
こうしたW‒67型2の小型核弾頭による戦闘は、最前線の戦闘員に対する放射能の問題を処理さえすれば簡単に使えるものであると考えられている。プーチンの戦略は、そうした考えをもとにつくり上げられたのであった。
現在、アメリカが実戦配備しているもっとも小型の核爆弾はB61核融合型爆弾、つまり水爆である。このB61は全長が3メートルあまり、直径は30センチほどで、重量は300キロ前後である。そして弾頭の爆発力は最小のものでいうと0.3キロトン、ダイナマイトなど爆薬にすれば300グラムの小さな弾丸ないし爆弾の破壊力を持っている。
なかには同じ大きさの爆弾ではあるが、弾頭に1.5キロ、10キロ、50キロといったものがあり、それぞれの重量の差はあるものの形は同じで、戦闘機や戦闘爆撃機が最前線の地上部隊が戦っているまさに鼻の先に投下し、破壊することが可能である。
ロシアのプーチンが恐れているのは、アメリカがこういった超小型の核弾頭をB61のような爆弾に搭載させることになると、アメリカの勝手な判断により核兵器の敷居が崩れてしまうことである。
プーチンがいま新しいロシアの核白書のなかで明確にしたのは、ロシア側のルールを確立し、そのルールに基づいて世界各国が戦闘を有利にするために小型の核兵器を使う、という考え方である。
プーチンの考え方は、「核兵器の戦いには勝者も敗者もない」という基本的なルールの枠を自分勝手な仕組みをつくることによって壊し、核戦争を始めてしまうことになる。
プーチンがいま提案しているロシアのルールに基づく核戦争の原則というのは、ロシアが強いアメリカに対して戦いを挑むために、便宜的に核兵器を使うことである。しかも現実問題として、アメリカが超小型の弾頭を使用できる体制をつくり上げており、いつでも実用化が可能である。
こうした新しい事態は、これまで第二次大戦以来、国際社会で受け入れられてきた「核戦争は、基本的には戦わない」という大きな原則、そして現実には報復戦略としてしか使用できない、という状況を一変させてしまうものである。
中国の習近平といい、ロシアのウラジミール・プーチンが行おうとしているアメリカに対する挑戦というのは、核兵器は基本的には使えないものと主張しながら、使うと指導者が決意すればいつでも使えるという安易な考え方に基づいている。
習近平とプーチンは、核兵器はできるだけ使ってはならないという人類の大原則を破り捨ててしまい、核兵器を乱暴に使って非人道的で独裁的な政治体制を推し進めている。そのうえ、国内や近辺の少数民族や国家を勝手な目的のために押し潰そうとしているのである。
こうした非人道的な独裁者、ウラジミール・プーチンと習近平の核戦略は、いまや世界に大きな災害を与えようとしている。世界の核兵器の状況は、この二人の独裁者、ウラジミール・プーチンと習近平によって大きく歪められようとしている。
更新:11月22日 00:05