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「アフリカでのワクチン大量廃棄」が引き起こす次の心配

2022年02月17日 公開
2022年02月22日 更新

國井修(グローバルファンド戦略・投資・効果局長)

 

低・中所得国での変異株発生を防げ

そして世界的な取り組みとして、最大の脅威である「懸念される変異株(VOC:Variants of Concern)」を新たに発生させないことも肝要だ。VOCを早期に発見し対応するには、アフリカなどの低・中所得国へのゲノム解析を含む検査・サーベイランス体制の強化、新規感染者や重症者・死者を減らすためのワクチンや治療薬の普及、医療体制の強化が必要である。

今年1月下旬でのアフリカ諸国全体のワクチン接種率は、1回目が15%、2回完了が10%で、いまだに人口の2%にもワクチンが接種されていない国も多いのが実情である。

その理由はいくつもあるが、とくにコールドチェーンと呼ばれる冷凍または冷蔵での保管・輸送インフラやロジスティックスの脆弱性、その管理やワクチン接種のための人材不足、さらにワクチン忌避などが挙げられる。

欧米や日本を含めて、ワクチン忌避は世界中のどこにでも存在するし、アフリカで顕著であるとの確証はない。とはいえ、アフリカでは以前からワクチンに対する強い拒絶反応がある地域、SNSなどによるデマや誤情報によって忌避感が広がる地域もあり、なかには国民の半数以上が接種を厭う国さえある。

さらに最近問題になっているのが、先進国から届けられるワクチンの大量廃棄である。現地に届けられはしたものの使用期限間近で、配布に間に合わない事例も少なくない。ナイジェリアでは最近100万回分以上が廃棄され、コンゴ民主共和国でも300万回分を超えるワクチンがこの1月で期限切れとなった。同様の事態は他のアフリカ諸国でもみられ、WHO(世界保健機関)も警鐘を鳴らしている。

現在、先進国では3回目のワクチン・ブースター接種が行なわれ、イスラエルでは4回目接種も開始されている。そのため先進国からの予約注文が殺到し、開発途上国に配分する予定だったワクチンが十分に確保できない状態である。

COVAX(新型コロナワクチンを共同購入し、低・中所得国に分配する国際的な枠組み)に携わっている私の知人たちは、ワクチンが開発途上国の現場に届かない、届いても廃棄される、接種が進まないことで、胃に穴が開きそうなほどのストレスを感じている。

問題はワクチンだけではない。低・中所得国では、重症化したときの医療用酸素も、医療従事者用のマスクや防護服も不足している。最近開発された治療薬も、現場に行き渡るのはいつになるだろうか。

私が勤務する国際機関も世界100カ国以上への支援を続けているが、先進国が自分の国だけではなく、世界の状況を本気で考えなければ、新型コロナ対策の南北格差は是正できない。

たとえコロナが収束しても、また次のパンデミックはやってくる。コロナの出口戦略だけを考えるのでなく、将来のパンデミックの「入口」を考えながら、国際協力の具体的な計画を策定し、行動に移すことが重要だ。今後は人類と微生物の「闘い」ではなく、「共生」を前提とした新たな方法を模索する必要がある。

 

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