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「老人中心国家」ニッポンの行方…世界一の高齢化×人口減少の行き着く先

2022年01月20日 公開
2022年01月20日 更新

宮本弘曉(東京都立大学教授)

 

これから世界の人口はどうなるか?

さて、ここまで日本の人口構造の変化について見てきましたが、次に、世界の人口構造に注目したいと思います。なぜ、世界の人口動態を知る必要があるのでしょうか?

その理由は、日本とは異なり、世界では人口の急増が予測されているからです。豊富な人口は労働力の源となり、巨大なマーケットをもたらし、企業の投資の対象にもなります。

例えば現在、世界最大の人口を抱える中国には、1990年代から2000年代初めにかけて、豊富かつ安価な労働力を求めて世界各国の企業が進出し、中国は「世界の工場」と呼ばれました。また、近年では、その旺盛な消費意欲により「世界の市場」に成長しています。

あるいは、アフリカは「最後の巨大市場」として注目されています。世界の人口に占めるアフリカの人口の割合は、2019年には約17%でしたが、2100年には約4割にまで上昇することが予測されています。人口の構造も消費意欲が旺盛な若者が多くなっており、今後、アフリカ市場は大きな成長を遂げていくと期待されています。

このように人口動態の変化は世界の経済構造に大きな影響を与えます。こうした動向を掴んでおくことは、人口減少で国内市場の縮小が予見される日本企業にとって新規の市場開拓を行う上できわめて重要です。

世界の人口は2020年には78億人で、そのうち6割がアジアに住んでいます。世界の人口トップ5をみると、3位のアメリカを除いてすべてがアジアの国です。日本の順位は11位となっています。世界には200以上の国・地域がありますが、人口が1億人を超えているのはわずか14か国です。

国連の「世界人口推計2019年版」によると、世界人口は2050年に97億人と、今後30年で20億人増加する見込みです。2050年の人口ランキングの1位はインドで16.4億人、2位は中国の14億人です。中国は2030年に14.6億人でピークを迎え、その後は減少に転じると予想されています。

3位はナイジェリアの4億人です。2020年のナイジェリアの人口は2億人で世界7位ですが、今後、驚くべきペースで人口が増加し、アメリカの人口3.8億人を超えると予想されています。

地域別に今後の人口予測をみると、アフリカが存在感を高めると予測されています。現在、46億人で世界人口の約6割を占めるアジアの人口は、2055年に53億人まで増加した後、減少することが見込まれています。これは、中国やインドといった人口大国でその人口が減少すると予想されているからです。

一方、2020年に13.4億人と世界人口の約17%を占めるアフリカは、2050年には24.9億人、2100年には42.8億人と世界人口の約40%を占めるまでに増加すると予想されています。

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