2021年11月19日 公開
デジタル庁HPより転載
――デジタル庁は約600人の職員のうち、1/3に当たる200人ほどが民間企業出身者です。行政経験のみの職員と民間企業出身者の関係性はいかがですか。
【石倉】官と民はしばしば対立構図として語られがちですが、その見方は間違っていると私は考えているんです。官民にはそれぞれに異なる強みがあります。行政経験が豊富な職員であれば霞が関のルールや論理がよくわかっているし、民間出身者であれば自らが培ってきた独自のノウハウをもっているはずです。
各々の力を合わせれば、より大きな力となって改革を進められるでしょう。実際にデジタル庁の職員たちの姿をみると、過去の経歴にとらわれず、「日本のデジタル化に貢献する」と皆が同じ志で仕事に取り組んでいる様子がひしひしと伝わってきます。
これこそが「ダイバーシティ&インクルージョン(それぞれの個性を尊重し、活かすこと)」を体現する組織であると感じながら、私も日々、職務に臨んでいます。
デジタル庁の組織についてお話しすると、4つのグループから構成されていて、そのうちの3つはプロジェクトをベースにチームを組成しています。めざしているのは、霞が関の縦割りを超えて職員一人ひとりの専門性を機動的に活かせる体制です。
プロジェクトごとのチーム制は民間企業では普通のことですが、行政では珍しくて民間に後れをとっていました。その意味ではまさしく、デジタル庁は官と民が協働する組織の象徴だといえるでしょう。私もこれまで民間企業で多くのプロジェクトに携わってきましたが、デジタル庁の試みはとてもエキサイティングで、ワクワクしているんですよ。
――石倉さん自身にとっては、デジタル庁での勤務が初めて行政の現場に身を置かれる経験になります。法的制約や仕事のスピード感など、民間企業との違いを感じる面もあるでしょう。
【石倉】たしかに、法整備における調整の複雑さやスピード感の欠如など問題を感じることは少なくありません。しかし公的機関である以上、一定の慎重さが求められるのは当然でしょう。
そのうえで行政組織の課題を挙げるならば、はたして自分たちの仕事の先にある「顧客」を見据えられているのか、ということだと認識しています。民間企業であれば顧客、すなわちお客さんのニーズをつかめなければ厳しい市場を生き抜けません。しかもそのニーズは、時代とともに目まぐるしく変化していくわけです。
行政にとっての顧客は「国民全員」になるわけですが、誰のために自分はどういう仕事をすべきか、実感が湧きづらい側面があるのかもしれません。顧客である国民と現場で直に接する機会が少ない点も無関係ではないでしょう。デジタル庁では、そうした「現場感」は民間企業出身者が補ってくれるはずです。
――プラットフォーマーを中心とした民間企業とはどんな関係を築くつもりですか。昨今は「BtoG(企業が行政に対して行なうビジネス)」の重要性も増しています。
【石倉】プラットフォーマーとは、ルールに基づいたうえで協力すべきところは協力していくつもりです。デジタル庁の組織体制と同様、すべてを官で解決しようとするのではなく、民間企業の力もどんどんお借りしたい。
また民間企業の皆さんには、デジタル庁との協働やデジタル庁自体への参加に積極的にチャレンジしていただきたいと望んでいます。日本のIT人材の不足は由々しき事態であり、行政においてはとりわけ深刻です。そこでデジタル庁では今年10月より、民間人材の通年採用を始めました。
募集している人材は、マイナンバーカードで行政手続きを行なう「マイナポータル」のプロジェクトマネジャーや、政府職員が使用する基盤サービスのWeb開発エンジニアなど多岐にわたります。行政と民間が融合する仕事を多くの方に体験していただきたいですね。
更新:11月22日 00:05