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橋下徹「すぐに決断すべき時こそ、大切にしているルール」

2021年07月23日 公開
2024年12月16日 更新

橋下徹(元大阪府知事/弁護士)

 

どんなに時間がなくても、"オープンに議論"を交わせ

2009年の新型インフルエンザのとき、僕は知事として大阪府下の学校の一斉休校を決めました。一斉休校の検討に関する情報が広がると、「学校現場が混乱する!」「働く保護者はどうしたらいいんだ!」「感染した子供がいない学校まで休校にしても意味がない!」といった声が府内から多数上がりました。

しかし僕は、大阪の高校生と小学生2名から発症例が出たときに、感染が爆発的に増加する「気配」を感じ取りました。2名は距離の離れた地域での発症例だったからです。そこで、猛批判を受けながらも、一斉休校に踏み切ることにしました。

ただし、反対の声が増えることも予想されたので、判断のプロセス・手続きだけはきちんと踏もうと決めて、賛成派と反対派で議論を重ねました。翌日から一斉休校にするには、前日の夜の11時ごろには結論を出さなければなりません。

僕の頭の中では一斉休校を決めていましたが、「午後11時に結論を出すから、賛成派、反対派、お互いに意見を出してください」と言って、僕の目の前でさらに議論をさせました。担当部局は反対で、教育長、教育委員会幹部たちも学校が混乱するという理由で反対でした。

この場合には、指南役チームに一斉休校賛成の主張をしてもらいます。賛成と反対の意見がぶつかるような議論の枠組みを作るのがリーダー・判断権者の手腕です。そして、どちらの側にも、とことん意見を出してもらい、判断すべき11時が近づいてきました。

当時、僕はまだ知事1年目。僕の決定に対してみんなが納得してくれる自信がありませんでしたので、少々ズルをしました(笑)。事前に当時の厚生労働大臣である舛添要一さんに根回しして、舛添さんを説得し、一斉休校に賛成するという趣旨のファックスを送ってもらいました。

手続的正義に基づいた十分な議論に、舛添大臣からのファックスを加えて、11時に一斉休校を実施すると決定しました。僕が決定した瞬間に、それまで反対の論陣を張っていた教育委員会が、素早く一斉休校に向けて動き始め、翌日から一斉休校が実施されました。

このように、決断するまでの時間が短くても、限られた時間の中で議論をぶつけ合わせなければいけないと僕は考えています。

1年後に医学的、公衆衛生学的に検証してみると、大阪の一斉休校には、感染者の爆発的増加を防いだ効果があったことがわかりました。結果的には実体的正義の面からも正しかったわけです。

ただし、決断する時点では確たるデータもなく意思決定したわけですから、それが正解かどうかはまったくわからなかったのです。ゆえに手続的正義の考え方で、時間の許す限りプロセスを踏んで、正解に近づいていくという思考が必要不可欠です。

 

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