Voice » イギリス人の対中感情を一夜にして変えた「ある映像」
2021年06月01日 公開
2024年12月16日 更新
【杉山】本当ですね。10年後に同じような新型ウイルスが発生しても、ファーウェイの5Gが隅々まで浸透している社会があれば、ボタン一つで「このエリアに入ってはダメ」「この人は感染した」とすぐにわかるようになっているかもしれない。しかし、それも自由やプライバシーを代償にしているのであれば、手放しで正解だと褒め称えることはできないでしょう。
最後に人権についてもう少しお話しすると、僕が意識するようになったのは1998年にイギリスで人権法がつくられてからです。また、イギリスでは11歳で人権についてクラスメイトと討論しましたし、とくに僕はクラスで唯一のアジア人として戦わなければいけなかった。一方、日本では小中高でどれだけ勉強するかといえばどうしてもかぎられています。
【安田】今日のお話で非常に大事だと感じたのは、人権や民主主義という言葉の概念は、おそらく日本語と英語では異なるし、さらに中国語においても概念が異なるということです。
実感として言うならば、中国の庶民がイメージする「民主主義」とは、民衆・庶民が生き生きと暮らしている状況をさします。「娯楽的な報道が増えて、スマホが便利になった最近は"民主的"になった」なんて語る人もいる。
また、中国的な「人権」とは、究極的にはメシが食えることです。現在問題になっている新疆は、じつはインフラ整備はかなりしっかりしている地域なのですが、ゆえに中国人にいわせると「新疆には"人権"がある(=メシが食える)」「欧米の批判は理不尽だ」となる。ベースとなる概念が違うわけです。
【杉山】そこなんです。その概念は生まれたときから固定観念として頭にすり込まれていますから、簡単にギャップを埋められないんですよね。
【安田】家族で幸せにテーブルを囲んで中華を食べている人がたくさんいる社会は、たとえ政治に参加する権利がなくても「民主」的で「人権」があるとみなされる。
【杉山】だからこそ日本人も外に出て、互いの概念が違うことを肌で感じるべきなんです。それも子どものときに触れることができれば本当はベストですが――。
父や韓国人の友人が相手のとき以外で、これだけ中国や政治について熱くなったのは久しぶりです(笑)。今日は安田さんにお会いできて本当に嬉しかったです。
【安田】こちらこそたいへん面白かったです。これからもご活躍を拝見することを楽しみにしています。
更新:03月14日 00:05