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収容所に響き渡る“女性の悲鳴”…悪化する「ウイグル人権問題」の実態

2021年05月20日 公開
2021年07月29日 更新

福島香織(ジャーナリスト)

福島香織
(写真撮影:福島香織)

中国共産党政権によるウイグルへの人権弾圧。女性への性暴力、強制労働など数々の指摘があるが、問題の全貌や解決の糸口は見えてこない。

ジャーナリストの福島香織氏は、英BBCによる報道を取り上げ、ウイグル問題はかつてより悪化していると言及する。現在、中国では何が起きているのか。

※本稿は『Voice』2021年6⽉号より⼀部抜粋・編集したものです。

 

BBCによる衝撃の報道

中国共産党政権によるウイグルへの人権弾圧は、2年前に拙著『ウイグル人に何が起きているのか』(PHP新書)を上梓して以来、ほとんど何も解決していない。いやむしろ悪化している。

今年に入ってウイグル人権問題で最も衝撃的な報道は、BBCによる、新疆の強制収容所からの女性生還者のインタビューだろう。

BBCの報道で、42歳のトゥルスネイ・ジアウドゥンさんが、2018年に新疆ウイグル自治区イリ自治州新源県の強制収容所に9カ月間拘留されたあいだの体験を次のように語っている。

「ある夜中、マスクをし、背広を着て革靴を履いた漢族の男が収容所にやってきて、気にいった女性を選び、廊下の先の部屋に連れ込まれた」。彼女も、何度か選ばれたのだった。毎晩のように、女性が牢屋から連れ出され、その部屋で漢族の男に強姦されたという。

彼女も複数の男に三度、虐待を受け、輪姦されたと証言した。

BBCは、彼女の証言を完全に裏付ける方法はないとしながらも、彼女が提示した旅券証や出入境記録などの書類と、事件の発生した時間の整合性、また彼女が描写した収容施設の配置などと衛星写真図像との分析が合致していることなどを挙げて、その信憑性を訴えていた。

彼女の施設内での日常生活の描写と受けた虐待の具体的な方法は、他の収容所生還者の証言とも基本的に合致していた。

BBCはさらに、強制収容所に1年半収容されていたカザフ人のグルジラ・アウエルカーンさんの証言を引用。彼女は拘留中、着ていたウイグル風の衣類をはぎ取られ、裸にされて手錠をかけられ、独房に入れられた。その後、外部の人間と思われる漢族や警察と思われる男たちが部屋に入ってきて、強姦されたという。

また、かつて強制収容所で中国語を教えるように強いられていたウズベク人女性のケルビヌル・セディックさんは、ワシントンに本部があるウイグル人権プロジェクト(UHRP)に、女性器に電気警棒を突っ込まれる拷問を受けている収容者がいたと証言している。

彼女は、「収容所では建物全体に響きわたるような悲鳴がいつも聞こえていた。昼食を食べているときも、授業を行なっているときも聞こえた」と訴えた。

さらにBBCに対して、ある漢族女性警官から、「強姦はすでに一種の文化」だという発言を聞いたと証言。漢族警官はウイグル女性を強姦するだけでなく、しばしば電気警棒で拷問を行なっていたという。

中国外交部の汪文斌報道官はこのBBCの報道について、証言者の女性たちが「俳優」であり、報道自体がフェイクだと主張した。

だが、電気警棒を性器や肛門に突っ込む拷問は、私自身が、チベット人記者や、天安門事件で政治犯として投獄経験をもつ亡命華人から間接的・直接的に経験談・目撃談を聞いたことがある。痛みとともに人間の尊厳を破壊する最も効果的な拷問として、中国では伝統的な手法なのだ、と。

BBCと中国政府どちらの言い分が真実に近いかといえば、私は自分の取材経験とも照らし合わせて、BBCのほうを信じるのである。

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