2021年02月23日 公開
2023年01月12日 更新
2018年に「アマゾンやネットフリックス、アメーバTVなどがネットへの露出を増やし始めています。日本人ユーチューバーの市場も、これから2、3年でアイドルや芸人に荒らされる」と予測した岡田斗司夫氏。その指摘は「芸能人のネットフリックス詣で」として的中。「2028年の未来」について、さらに考察を進める。
※本稿は、岡田斗司夫著『ユーチューバーが消滅する未来 2028年の世界を見抜く』(PHP新書)の一部を再編集したものです。
2016年、アメリカの大統領選でドナルド・トランプとヒラリー・クリントンが争っている時、『RealTrueNews』は「実は秘密裏に行われた世論調査によると、トランプ大統領の方が支持が多かった」という主旨のウソ記事を載せました。
そうしたら、その記事があっという間にツイッターで何十万ツイートされ、「実はトランプの方が支持者が多い。でもそれはあまりにもショッキングな結果だから、ABCもCBSも載せてない」という尾ひれまでついて拡散していきました。
真面目なニュースサイトが反論すると、ウソ記事を信じた人は「じゃあ、証明しろ!」と言ってくる。でも、「そんな秘密調査なんてなかった」ということを証明するのは、ものすごく難しいわけです。
その時のアメリカの大統領選では、遠く離れた東ヨーロッパはマケドニアの、英語もそれほど流暢ではない若者がフェイクニュースを量産して大金を稼ぐ、なんて状況も起こっていました。
フェイクニュースサイトを運営している若者は、どちらの陣営がいいとか悪いとか、そんなことは気にしていません。とにかくあらゆる方法でウケるニュースを量産し、ひたすらアクセスを集めただけなんです。
この頃から、「フェイスブックやグーグルは、フェイクニュースを排除しろ!」という声がユーザーから上がるようになってきました。
これに対して、グーグルは検索アルゴリズムを変更して、悪意あるページが表示されにくくしたりと対策はしていますが、同時に「事実を確認するのはグーグルではなく、ユーザーが十分な情報に基づいて判断できるように提供しているのです」と投稿していたりもしています。
要するに、「ニュースの真贋を判断するのは、あなたたちですよ」と言い訳しているわけです。
フェイスブックも、外部メディアと連携してファクトチェックをし、怪しいと思われる記事には「警告マーク」を付けるようにしましたが、思ったように機能せず、2018年には警告マークを外してしまいました。
ほかにも、グローバルITプラットフォームを構築するために、フェイクニュースを何とかしようと頑張ってはいます。やはりグーグルが運営するユーチューブは、陰謀論っぽい動画がアップされたら、ウィキペディアの関連情報を表示してユーザーが真偽を判断できるようにしました。
また、ウィキペディアを運営するウィキメディア財団は、クラウドファンディングで資金を募り、プロのジャーナリストが事実確認を行う『ウィキトリビューン』というニュースサイトを立ち上げています。ただ、僕は「こうした努力は無理筋だ」と思っているんです。
グーグルなんかの人たちは「みなさん自身が情報を集めて判断してください」と言うけど、そんなことができるのは一部の人であり、情報消費者ではないでしょう。消費者側の能力を高めて、フェイクニュースによる被害を防ごうというのは原理的に無理じゃないでしょうか。
それどころか、「ウソよりも真実を信じろ!」と相手に強制するのは、近未来社会では「マナー違反」になってしまうかもしれません。「宗教より科学を信じろ!」と言うのと同じで、傲慢とまでは言わないけど、みんなに要求するのは無理がある。
極論すれば、もうすでに「ニュースが真実かどうか判断する」ことはたいていの人にとって重要ではなくなっている。フェイクニュースを受け入れることが「文化」になりつつあるんです。
更新:11月22日 00:05