2021年02月18日 公開
2022年12月28日 更新
たしかに、トランプ氏が北米・欧州同盟の機能維持にほとんど関心を有していないことは誰の目にも明らかとなった。
トランプ氏の米国は、これまで欧州主要国指導者が慣れ親しんできた「時に傲慢ながら、普遍的価値では妥協しない頼もしい」米国ではない。彼らの恐れが無情にも的中したことは事実だろう。しかし、ちょっと待ってほしい。
筆者の見立ては違う。現下の世界的混乱は、特定個人の資質の問題にすぎないのか。米国政府だけの問題なのか。さらには、世界経済・貿易やNATOの国防費負担だけの問題なのか。われわれがいま問うべきはこれらの疑問だ。
米国と欧州・中国の確執ばかりが注目されるなか、われわれ日本人は以下のとおり、より戦略的見地から問題の本質を見極める必要がある。
2016年の大統領選挙戦前から、トランプ氏の直情的性格は誇大性・賛美を求める欲求・特権意識が強く、自己を最重視し、業績を誇張し、不相応の賞賛を求める、米精神医学用語でいう「NPD(自己愛性パーソナリティ障害)」が原因だと一部で指摘されていた。
しかし、これだけでトランプ氏の現在の言動を説明することはできない。
トランプ氏のような人種差別的、排外主義的、内向的な自国第一主義は米国だけの専売特許ではない。現在、欧州、中東、アジアでも同様の傾向が拡大している。
しかも、こうした米国外での現象は、もちろんトランプ氏が起こしたものではない。トランプ現象はこうした世界規模で起きつつある政治現象の一側面にすぎない、と見るべきである。
されば、現在の世界の混乱もトランプ氏が始めたものではない。
むしろトランプ氏は現在、世界的規模で起きつつある人種差別的、排外主義的、内向的な自国第一主義の台頭という混乱のなかで、彼の支持者が米国の国益と考える行動を実行しているにすぎないのかもしれない。現状は、トランプ氏の個人的資質の有無とは無関係に悪化しうるのだ。
京都大学の柴山桂太准教授は、人間社会では自由化・グローバル化の波とこれによる不利益を意識する波が過去に何度も起きており、現状は、主権国家がグローバル化の弊害から国民を守るべく本来あるべき姿に戻りつつある流れの一部だと喝破する。至言だ。
トランプ氏などのポピュリズムはグローバル化弊害の民主制下での是正現象なのかもしれない。
更新:11月24日 00:05