2020年11月30日 公開
2022年03月02日 更新
第一次世界大戦後の「ヒト・モノ・カネ」の移動の自由を求めたグローバリズムが進んだ結果、何が起きたか――世界恐慌です。これに懲りた各国が採用したのは、修正資本主義と徹底的な保護主義でした。
イギリスのマクドナルド内閣は、イギリス連邦諸国(自治領と植民地代表)をカナダに集め、連邦内の低関税を優遇する一方で、地域外の商品には200%という高関税をかけました。これを「ブロック経済」と言います。
フランスやアメリカも、これに続きます。フランスは植民地や友好国とフラン通貨圏を築き、経済の安定を目指します。アメリカは、これまでの武力を背景とした高圧的な外交を改め、ラテンアメリカ諸国をドル経済圏に組み入れます。
その結果、起こったのが第二次世界大戦です。植民地の少ない日本やイタリア、第一次世界大戦の敗北により植民地を没収されたドイツは大ダメージを受けます。これにより、戦争によって市場を確保しようと主張する世論が高まったのです。
こうして、日本は満州で軍事行動を開始し、ドイツではヒトラー政権の誕生へとつながっていきます。極端なグローバリズムが極端なナショナリズムを引き起こし、第二次世界大戦という最悪の結果を招いてしまったのです。
第二次世界大戦後、再びグローバリストが覇権を握りました。今度は、世界中で何が起こったでしょうか。アメリカでは、国境を開いたために、中南米から移民という名の不法入国者が流入し、海外からの安い労働力によってアメリカ人の職が奪われました。
移民には貧しい人が多いですから、貧富の差も広がり、国内の治安が悪化しました。それによって、自国の国益を守る「アメリカ・ファースト」が支持されてトランプ政権が誕生します。
TPP(環太平洋パートナーシップ協定)からの脱退をはじめ、国際協調より自国の利益を優先する姿勢を打ち出し、アメリカはナショナリズムへと大きく舵を切りました。
同じようなことは、ヨーロッパでも起こりました。ドイツがEUへの予算増とシリア難民の受け入れを要求したばかりに、イギリスはEU離脱(ブレグジット)を選択しました。
フランスでも、パリのテロ事件などで国内の治安が悪化すると、不法移民取り締まりを掲げる国民連合の女性党首マリーヌ・ルペン氏が、大統領選で2位になるという大躍進をしました。イタリアでは、ナショナリストの「同盟」を率いるサルヴィーニ氏が、選挙のたびに票を伸ばしています。
今、グローバリズムの反動がナショナリズムへの傾倒となって表れているのです。グローバリズムとナショナリズムのシーソーゲームが繰り広げられてきた結果、2010年代からは、世界中がナショナリズムに向かっています。今後、数十年はこの流れが続くことでしょう。
世界が分断の危機に立たされたのは、今に始まったことではありません。グローバリズムとナショナリズムは、長い時間の中で振り子のようにゆっくりと揺れ動いていました。
それはニュースの表層ばかり追っていても見えてきません。政治思想という軸抜きには、世界情勢の背景を深く理解することはできないでしょう。
更新:11月22日 00:05