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芥川賞作家・村田沙耶香が振り返る「コンビニバイトが続かない定年後の男性」

2020年05月02日 公開
2021年08月30日 更新

村田沙耶香(小説家)

 

第二の仮面を付ける

――自分を真っ新にするのは、「おじさん」にかぎらず簡単なことではありませんね。

【村田】意識的に自分を変えようとすることって、とても苦しいことだと思うんです。コンビニを辞めてしまう年配の男性にとっては、いままでの価値観のなかで暮らすほうが楽だったのかもしれません。

しかし、会社から放りだされて孤独になったとき、それがその人にとって前向きな変化に繋がることもあると思います。

人は誰しもが異なったいくつもの「仮面」を付け替えて生きていますが、定年によって、もっともウエイトを占めていた「会社員」の仮面を捨てなければいけなくなったら、周りに合わせていた「おじさん」というキャラクターではない、新しい仮面をかぶるのも楽しいのではないかな、と思っています。

コンビニで働くときの自分は、喋り方も性格も全く違う。それは本当の自分じゃないかもしれないけど、いままでが本当の自分だったかなんて、じつは誰にもわかりません。

「ミラクリーナ」のリナのような若い女性だけでなく、おじさんもおばさんもおばあさんも、誰だって呪文を唱えて新しい自分に変身できたら素敵ですね。

そこから、新しい人生が始まったら、とても楽しいと思います。

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