2020年02月17日 公開
さて、トランプ氏の3年間の外交の特徴を挙げると、①弱腰批判を回避する、②戦争はしない、③「敵」のトップと会う、④制裁などで安上がりに封じ込める、⑤「米国第一」のタフな交渉人を演出、⑥岩盤支持層を喜ばせる――ということになる。
前述したようにこうした外交では、長期的な米国の国益は達成できず米国の威信は低下する一方だ。不慮の事態から本格的な軍事衝突に発展する懸念も大きい。
このため、今年に入ってからの民主党の大統領候補たちのテレビ討論会では、トランプ外交の批判で盛り上がっている。
長く上院外交委員長を務めたのち、オバマ政権で8年間副大統領を務めたバイデン氏は、ソレイマニ司令官殺害の理由という「切迫した大使館攻撃」が虚偽であり、イラン核合意からの離脱を誤りだと指摘している。
トランプ氏の行為は「火薬庫にダイナマイトを投げ入れたようなものだ」とも言っている。
同じく中道派で従軍経験のあるブティジェッジ前サウスベンド市長も、トランプ氏の下でイランとの関係が、「戦争の瀬戸際までエスカレートした」と批判している。
民主党で左派のサンダース、ウォーレン両上院議員は、トランプ氏のソレイマニ司令官暗殺が議会への通告なしに行なわれたことや戦争に巻き込まれる懸念を挙げている。
民主党候補に共通するのは、イラク戦争以来の国民の厭戦観に訴える点だ。
米国の大統領は、外交・安全保障政策においては自由裁量の余地が大きい。経済や医療保険、教育、移民政策では、予算を握る議会の了承を取り付ける必要があるため、大きな業績を残しにくい。
最近では医療保険改革でオバマケアを実現したオバマ氏は例外だが、彼は政治エネルギーをそこに使い果たし、他の面では目立った業績を上げられなかった。
2020年大統領選は、経済が好調なまま投票日を迎えそうだ。このため、経済政策で民主党には勝ち目がない。差別的発言などトランプ氏の「分断統治」は問題だが、分極化する米国でこの問題を提起しても、トランプ支持派を切り崩せない。
このため外交こそが争点になりうる。保守陣営でも良識派はトランプ氏の外交・安全保障政策にあきれているし、遠い外国の紛争に巻き込まれるよりも国内の立て直しに専念してほしい、という思いは右も左も共通している。
更新:11月22日 00:05